エレベーター前通路の男

職場で体験した不思議な出来事があります。
私の職場は四階建てで、田舎でも都会でもなくパッとしない街の外れに建っています。
建物は自分よりは先輩なのではないかと、一目でわかるほどにくたびれた建物でした。
くたびれた建物にも、一丁前にエレベーターがあり二つあり、一つは会社入り口すぐ、もう一つは普段はあまり使わない会社奥のエレベーター
老朽化はしてはいますが、まだまだ現役で時々社員の方たちは使っていました。

そんな職場で、私は１階から４階に用があり、会社奥のエレベーターに乗り込みました。

中には誰もいなく、私がエレベーターに乗り４階のボタンを押しました。
エレベーターはグウォーンと古い唸り声をあげ進み出しました。
するとエレベーターは３階に止まり唸り声を止めました。

「珍しく誰かと相乗りか…」と思い扉が開くと、正面には会社の先輩が立っていました。
「お疲れ様です！一度４階にいっちゃいますけど大丈夫ですか？」と私が尋ね、先輩が「大丈夫だよ」とそんなやりとりしている時に、エレベーターの前を一人の男性が右から左に横切っていきました。

私は乗り込んでくるものかと思い「開」のボタンを押して待っていましたが、男性の足音は左の奥の空間へと消えていきました。

この出来事はその時にはまったくなんとも考えていませんでしたが、エレベーターを閉めた後に私は先輩に聞きました。
私：「左の通路ってなんかありましたっけ？？」

先輩：「いや、今確か通路びっしりに荷台が置いてあって通るのも無理だよ」

私：「男の人いきましたよね？」
そう伝えると、先輩はそんなわけないだろ〜とでも言いたげにエレベーターの扉を開け、左の通路を覗き込み、私も一緒に覗き込みました。

するとそこは薄暗い中でもひとめで人が通れないとわかるほど荷台がびっしりでした。
なぜか怖くありませんでしたが、世の中には本当に不思議なことがあるのだなと思わせてくれた体験でした。