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ヒトコワ

GENGOさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

お盆に釣りに行って
短編 2021/08/16 12:30 6,764view
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ようやくSが見える位置まで戻ってきた私は、
対岸に人影を見つけた。釣り人だろうか?
ちょうどSのほぼ真向かいの位置。
どんな釣りをするかにもよるが、普通はわざわざ誰かが
釣っている真向かいで釣りをするのは避けるものだが、
と少し訝しんだ。釣り人ではないのだろうか?
まだ距離があるのでよく見えないが、釣竿などを
降っているようには見えない。
やはり釣り人ではないようだ、そう思った。
そして改めてSに視線を戻した私は、違和感を感じた。
Sの雰囲気がおかしかった。
ウキを見つめている。
いや、釣りをしていてウキを見つめるのは当たり前なのだが、

その集中度というか真剣さというか、それが普通ではなかった。
目つきが一心不乱というか、体が硬直しているというか。
Sのすぐ横まで来て私はおそるおそるSに声をかけた。
Sは私が戻ってきたのに気が付いていなかったらしい。
私の声にSはあからさまに驚き、とたんに慌てだし、
「帰ろう、帰ろう、すぐに。」
と竿をたたみ始めた。
私は状況がわからなくて戸惑ってしまったが、
フと気が付くと、対岸にいたはずの人影がいなくなっていた。
慌てるように帰り支度をしているSに、
あれさっきまで対岸にだれかいたよなあ、と言ったところ、
Sはエッという感じで対岸に目を向け、
直後、その場にへたり込んだ。

Sが言うには、
私がいなくなってからしばらくして、
対岸に人がいるのに気が付いた。
50才前後といった感じの男性。
釣りをする服装でもないし釣竿なども持っていない。
散歩か釣り見物の人だな、と思いかけたのだが、
その人と目があってしまった。
というかその人が、川面やSの釣り姿を見ているのではなく、
Sを見つめているのに気が付いた。
まっすぐにSを見つめている。
Sはなんかやだな、と思ったのだが、対岸にいる相手に
見るなとか帰れとかいうわけにもいかない。
居心地が悪い思いをしながら釣りに集中しようとした。
しばし目線をウキにむけていたのだが、気になって仕方がない。
数分後、おそるおそる対岸の人に目線を向けた。

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