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心霊

ロンチーノ・ぺぺさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

目が合う
短編 2021/07/14 15:34 2,442view
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 やはり、何者かの声がする。それも何か歌っているような拍子のついた声だった。
 暫く様子をうかがっているとだんだん声がハッキリと聞き取れるようになったが、その内容に桐生くんはギョッとした。

「ながれながれるちのかわがあ こいぬいっぴきおっこちりゃ あっといまにほねになるほねになるう おやまおこればちがわれてえ いとしいこらが みなしぬるみなしぬるう」

 それまで助けを求めようとしていた気持ちは瞬間で冷めたという。そして自分の怪異遭遇癖を思い出した。

「そうじゃなくても、仮に人間でも怪異でもそんな不気味な歌うたってる相手に声をかけるのはハードルが高いデスヨ」

 それは確かにそうだ。

 歌を聞きながら桐生くんは、今度は自分の存在が相手に気が付かれないように必死だった。
 目を閉じ、できるだけ呼吸を止めて身を固くして向こうが過ぎるのを待つ……しかし、いつまで経っても歌は遠くなるどころかむしろ近くで鳴っているように聞こえるのである。

 恐怖に我慢しきれずに目を開ける。もう一度、恐る恐る外の様子をうかがうと、ソレは向かいの塀の上にいた。街灯に照らされた塀の上から桐生くんをジッと見ながら歌っていた。

 ソレはおかっぱ頭の少女の生首だった。
 頭が異様に大きく膨れ上がり、耳まで裂けた口からは血塗れた歯が覗いていた。血の気が失せた白い顔の中で溢れそうなくらいに大きな目玉がギョロギョロと忙しなく動き回っていたが、桐生くんの視線に気がつくとピタッと止まった。不思議なことに、少女の目玉は左右ばらばらに向いているのにしっかりと視線が合っていたという。少女は無表情で桐生くんを眺めたまま歌い続けた――桐生くんの記憶はここで途切れている。

 結局、翌朝、気絶した桐生くんはゴミの回収に来た業者に助け出された。
 両親は桐生くんが家にいないことに気がついていなかったらしい。
 おかっぱ少女の生首も怖いが、なによりもそのオチのほうが怖いと私は思った。

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コメント(1)
  • うちのごみ置き場の鍵は暗証番号タイプだけど、閉じ込められたら、どないすんねん?

    2021/07/15/22:54

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