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ヒトコワ

GENGOさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

用水路沿いの道
短編 2021/03/22 17:46 4,279view

ある晴れた日に、私は自転車で走っていた。
用水路に沿った舗装路だ。
その用水路は見渡すかぎり畑だらけの土地の中を
北から南に数kmに渡り流れており、
西側東側の両側それぞれに道が並行して沿っていた。
どちらの側の道も、車も自転車も人もあまり通らないし、
とくに一方通行などでもない。
なので西側を走ろうが東側を走ろうが自由なのだが、
その時の私はたまたま東側の道を北上していた。
自転車なので道の左側に寄って。
用水路側にピッタリ貼りつくようなコース取りで。

だが途中で、用水路の西側の道にコースチェンジする気になった。
深い意味はなかった。ほぼ気まぐれ、ほぼ気分転換で。

用水路にはある程度の間隔をあけて幾つも橋がかかっている。
道をかえることにたいした手間はかからない。
目前に橋が近づいたころ合いに自転車のスピードを落とし、
緩やかにカーブを描く感じに左折する形で橋に侵入していった。
しかし橋に前輪を突っ込んだくらいのタイミングで、
なにかがすぐ前方にいるのに気が付いた。
瞬間的に「危ない!ぶつかる!」と急ハンドルに急ブレーキ。
ギリギリのところで接触も転倒も回避することができた。
心臓をバクバクさせながら確認をすると、
そこにいたのは老人だった。
70歳前後くらいだろうか。小柄な男性。
よりによって橋の出口付近、
私から見たら入り口付近で、コーナーの内側。

ただでさえ橋の欄干に隠れて死角になる位置に、
まるでワザと隠れたかのように小さくなって座っていた。
殆ど人気のない畑ばかりの場所の用水路の橋の上、
通行の死角になる位置に人がいるなんて予想が出来るわけがない。
「アンタ、ナニをやってるんだ!」という怒りのような感情と、
「事故らなくて良かった」というホットした気持ちと、
「もしかして体調が悪くなって動けなくなっていたのか?」
という疑問などがほぼ同時に頭に沸き、少し戸惑った。
そしてしばしの間があいた後に、
「あの、どこか具合でも悪いのですか?」
とおそるおそる尋ねてみた。
だが、反応が薄い。
気を失っているとかではないのだが座り込んで動かない。
体調を気遣い顔色を見ようとしたのだが、顔をそむけ眼をそらす。

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関連タグ: #バイク#橋#金縛り
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