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呪い・祟り

キミ・ナンヤネンさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

先輩のお守り
長編 2023/12/17 05:04 4,992view

その手を太ももで軽くはたいて、スマホを取り出してライトを点け、懐中電灯を拾うため窪みの方へと向けた。

窪みは40センチから50センチほど低くなっていて、明るい時ならここに窪みがある事が分かるが、暗闇で見えないままここに落ちたら確実に怪我をしていた事だろう。

足元は良く見えず、しかも滑りやすいから、後からB、Cと合流した時にでも拾う事にした。

スマホのライトで辺りを照らしてみると、数メートル先に2本の大木を見つけた。

他の木々と比べてみても、その2本だけは明らかに太く、気のせいか何らかのエネルギーを感じるほどだった。

木に近づいて灯を照らすと、思わずつぶやいた。

「何だこれ…?」

その2本の大木の全体を見ると全身に戦慄が走った。

2本の大木には、無数の藁人形が打ちつけてあったのだ。

見た所、それぞれ少なくとも10数体、合わせて30体ほどの藁人形がびっしりと密集していた。

その時、足で何かを踏んだような感触があって灯を照らしてよくみると、それはかなりの量の藁だった。

雨の影響か、時がたって藁人形がバラバラになった物だろう。

いつの間にか、靴にはたくさんの藁が絡みついていた。

俺はその藁を取ろうとしてしゃがんだ瞬間、どこからか「何か」が叫ぶような声が聞こえた気がした。

何だ?と思って動きを止め、声がどこから聞こえるのか耳を澄ました。

その叫び声は鬱蒼とした木々に反射しているせいか、どこから聞こえているのかその方向がはっきりと分からない。

しかし、「何か」だんだんと俺に近づいている事はわかった。

俺はBかCのいる所へ逃げようとしたが、二人の懐中電灯の明かりが見えなかった。

沢山の木の陰になっているか、地面の起伏か何かで光がよく見えないのだろう、これは予想外だった。

スマホの灯があるとはいえ、この暗い中でうかつに動いては危険だ。

俺はその声がどこから聞こえるのか、その場でゆっくりと見渡した。

ちょうど真後ろ辺りを見た瞬間だった。

暗闇の先から叫び声を上げながら「何か」が俺をめがけて近づいて来るのが分かった。

スマホの灯で照らそうとしたが、まだ距離があって「何か」の様子がよくわからない。

とりあえず「何か」から逃げようとして後ずさりをするが、まだ少しの好奇心があるからなのか、うまくできなかった。

叫び声を上げながら「何か」が徐々に近づいてくる。

俺はゆっくりと下がっていたが、とうとう灯が届くまで「何か」が近づいてきた。

灯が「何か」を捉えると、それは金づちを持って振り上げている白装束の女だった。

「うわああっ!!」

俺は思わず、生まれて初めて出した事の無いような大声を出した。

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