飛び出し坊や

「飛び出し坊や」でわかるだろうか、学校や保育園などが近くにある、子供の飛び出しに注意喚起する子供の絵が描かれてある看板のようなアレの事だ。

僕の家のすぐ近くには小学校があるのだが、家のすぐ横の住宅街の中にある狭い路地のこの交差点では事故が多い。

ここは確かに狭くて見通しが悪いのだが、信号を守ってゆっくりと走れば事故など起きるはずがないが、なぜかこの交差点では事故が起きる。

学校が近いこともあって点滅式ではあるが信号もきちんと整備してあるのにも関わらずだ。

ある事故では車同士だったり、またある事故では単独で民家の塀に突っ込んだりしているが、不思議と大きな人身事故が一件も無かったのが救いだ。

そして今日もまた事故があった。

車がぶつかった音がしたから、いつものように家を出て現場に行ってみると、単独事故を起こして塀にぶつかった車の運転手と話が出来た。

「大丈夫ですか？今救急車呼びますね。」

と座ったままの運転手に話しかけると

「『飛び出し坊や』が動いたから避けようとしたんだけどな…。」

と答えた。

そういえば以前事故を起こした運転手に話を聞いた時も同じような事を言っていた。

免許を持っていない僕は「『飛び出し坊や』が動くなんて、この人は何を言っているんだろう」としか思わなかったが、人が事故を起こす時というのは、きっと何か見間違えでもしているのだろう。

しかし、どう考えてもおかしいのだ。

その交差点は道幅が狭くて『飛び出し坊や』は置かれてない。

そこにあるのは一つの花束だけなのだ。