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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

みどりのおばさん(修正版)
短編 2023/04/04 15:25 3,978view
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学童擁護員(がくどうようごいん)とは、小学校の通学路上に立ち、児童の通学における安全確保に当たる職員のことである。女性の学童擁護員については、【みどりのおばさん】という愛称がある。
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これは私がまだ小学校6年生だった時の話なんだけど、、、
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「○○子ちゃ~ん!」

朝になると決まって聞こえてくる元気な子供の声。

数人のクラスメートが玄関口に迎えにきてくれていて、私は母に見送られながらその子たちと一緒に集団登校をしていたんだ。

細い路地を皆とぞろぞろ歩き進むと、やがて大きめの交差点が見えてきてね、そこにはいつも【みどりのおばさん】が立っていたんだ。

緑のエプロンをした小太りなおばさんで、熱心に手際よく子供たちの交通誘導をしていた。

赤信号の時は「はい、みんな止まって~」ってハキハキと大声で私たちの前を黄色い旗でさえぎり、
青信号に変わると「さあ、早く早く」って言って旗で誘導するんだ。
その様は本当に真剣そのもので、ちょっと怖い感じさえあったな。

一度母にそのことを話したら、こんなことを言ったんだ。

「あの人ね前に小学生だった息子さんを、あの交差点で亡くしたそうよ。
なんでも少年野球の見送りだったそうなんだけど、目の前でトラックに轢かれたらしくてね。
それ以来ずっと朝な夕な、あそこの交差点で交通誘導しているみたいよ。
本当に感心な人よねえ」

この話を聞いた時、何故だか私はおばさんに対して、素直に母と同様の良い感想を持てなかった。

どうしてだろう?

と後から考えた時、私の頭の中に過去のある情景が浮かんだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

それはいつもの朝の登校時、あの交差点で信号待ちしていた時のことだった。

私たちの真横には、いつものようにおばさんが直立し旗で前を遮っている。

その場にいた他の生徒たちのうち数人は、見送りの母親と手を繋いでいたんだけど、その中には野球のユニフォーム姿の男の子の手を握る母親の姿もあった。

何気におばさんの方を見ると、その母子の様子をじっと見ているのに気付いた。

ただその横顔には優しさの欠片もなく、怒りと羨望に満ちていて、まるでお伽噺の山姥みたいに醜いものだった。

その時私は何だか見てはいけないものを見てしまったという気持ちに襲われたことを、今もはっきり憶えている。
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そして、これは三学期の始まって間もない頃のことなんだけど、、

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コメント(2)
  • リアルに怖いな。

    2023/04/06/02:03
  • とても怖いです。

    2023/04/06/18:18

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