祖父の願い

これは私が小学生の時の話です。

私の母方の祖父と祖母は私たちが住んでいる場所から距離の離れた地域に住んでいました。

ある日、祖父が体調を崩したと祖母から母親に連絡がありました。母親はその日の夜に様子を見に行くため、実家に戻りました。

私や兄姉は学校もあったため、仕事を休めなかった父親とその時は家に残ることになりました。

祖父は思ったより症状が重たいらしく、長くはないと思うと母親が父親に電話で話していたのをたまたま耳にしました。

その2日後、私が眠っているときに祖父が夢に出てきました。祖父は夢で私にこう言いました。「最後に孫たちに会っておきたかったなあ」と。

これは祖父からのメッセージだと思い、翌日父親に無理を言って、兄姉とともに祖父の入院している病院に面会に行きました。

私たちが病室に入ると先ほどまで眠っていた祖父が目を覚まし、「ありがとう」とつぶやきました。そして祖父はまた眠りにつきました。

祖父が発したのがその一言でしたが、私にとってはその「ありがとう」という言葉が深く心に刺さりました。

その日の夜中祖父は亡くなりました。みんな泣いていましたが、私は不思議と悲しくはなりませんでした。

私は祖父に「間に合ってよかったよ、ありがとう」と心の中で伝えました。