壺オジ

するとまた「ふふ」っと笑う声。

私は「ここかぁ～」と言って階段を降りてみました。

地下は電気がついていないので暗くてよく見えませんが、
入り口から入ってくる明かりで少しだけ見えます。

そこはおじさんがなにかの作業に使うのか、天井から鎖が垂れていたり、
小さな机や椅子もありました。
壁には写真がたくさん張られており、どれも知らない子供たちの写真でした。

知ってる子もいます。さっきの青い服の女の子と、私です。
そういえば私もいつかおじさんに写真を撮ってもらったことがありました。

「そうか！わかった!ここは写真を現像する部屋なんだ!」そう思いました。

よくテレビドラマなどで暗い部屋の中で赤いランプだけを灯して、
写真を現像するシーンを見ていたのを思いだしたのです。

「へ～スゴーイ、赤いランプはどこなんだろう」
そんなことを考えながら部屋の隅々を見ましたが、そこに女の子は発見できません。

でも、部屋の隅に大きな壺があるのが判りました。
子供なら入れそうなくらいの大きな壺です。

近寄ってよく見ると、壺にはフタがしてあり、紐できっちり縛ってありました。
これではとても中に隠れることはできません。

私はちよっと悔しくて、ふざけて壺をコンコン叩いて
「はいってますか～」と聞いてみました。

誰も入っているわけはありません。

暗いし、もうあきらめて上にあがろうと振り返ったとき、

(コン・・・コン・・・)と壺の方から音がしました。

「えっ?」・・・びっくりして再び壺の方に向き直ると、また

(コン・・・コン・・・)と音がしました。

しばらく口を開けたままじーーっと壺を見ていると・・・

(コン・・コン・コン・コン・・コンコンコンコンコンコンコン!!!)

音がどんどん激しくなってきて、私はもう怖くなって一目散に逃げました。

床の扉も元通り閉めて、「かくれんぼお～わ～り～!!」と大声で叫んで、
玄関に直行し、靴を履いて逃げるようにおじさんの家を飛び出しました。
あの青い服の女の子とはそれきり会うことはありませんでした。