3人いたのに？

私が中学生の時の話です。
当時はあるアイドルが有名俳優と不倫をしていた事を苦に自殺したという事件が起こったばかりで、その後全国で、彼女を追いかけるかの様に自殺する若者が増えるという不思議な現象が起こっていました。

ある日の授業中、窓際に座っている生徒がいきなり『先生！あれ！』と外を指さしました。
私もその方向を見上げると、学校からほどなく離れたビルの屋上に、今にも飛び降り自殺をしそうな女性が3人いました。
先生は慌てた様子で必死に叫びましたが、声が届くような距離ではなく。それから間もなく、1人の女性が先に飛び降りました。
もちろん教室は大パニック。中には泣いてる女子もいました。

残った2人もいつ飛び降りるのか分からない状態でしたが、この状態を察知したのか、どこからか男性が数人駆けつけ、飛び降りをしようとした2人を無事に保護しました。
取り敢えず安堵しましたが、先に飛び降りてしまった女性がどうなったのか気になりました。

しかし、不思議な事が起こりました。小さい街なので事件などがあれば一瞬で噂が広まるはずなのに、自殺があった話は誰の口からものぼりませんでした。
翌日、先生に尋ねると、先生も不思議そうな感じで教えてくれました。あの時にビルの屋上にいたのは3人ではなく2人で、無事に2人共に保護できたという報告を警察から受けたそうでした。

ただ、私たちクラス全員は先に飛び降りた3人目の存在を見ている訳なのです。
もちろん先生も警察には3人いた事を伝えたそうですが、2人しかいなかったと言われた為、担当の警官に「自分は頭が変になったのですかね？」と話したそうです。
　そうしたらその担当は「不思議なんですが口外しないで下さい」と言ってこう語ったそうでした。

どうやら自殺しようとした2人も、「当初は3人いて、1人は先に飛び降りた」と調書の時に語っていたようなのです。
「先に飛び降りた女性とはもともと面識がなかった、ビルの近くで初めて会って、気がついたらビルの屋上に立っていた」と2人とも言っているそうです。
たしかに、先生を加え私たちクラスメイトだけでなく学校のほとんどの生徒が、女性は3人いて、1人が先に飛び降りたのを目撃していたのでした。
しかし、地上にはくまなく探しても、誰かが飛び降りた形跡はなかったそうです。