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心霊

takeさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

霊感体質の理香先輩
長編 2022/12/08 21:50 4,728view
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理香先輩と知り合ってから、不思議な現象に遭遇することが確実に増えました。
頻度でいうと、多いときはひと月に数回ある、少ないときは一度あるかないか、そんな感じです。
印象的な出来事をいくつか挙げると、
●授業中、中年の男が窓からじっと教室内を覗いていることがありました。その教室は三階にあり、窓の外に人がいるわけもないのですが……。
●同じ階段の決まった地点で必ず足を踏み外しそうになることがありました。そのときは視界の隅に踏み板から白い手が出ているのが見えていました。毎回手すりを掴んで事なきを得ましたが……。
●食堂に行くといちばん隅っこのテーブルに、ジャージ姿の男子生徒がなにも食べていないのにじっと座っていることがありました。他の生徒には見えていないようでしたが……。
●文化祭の準備で遅くまで残っているとき、教室のドアが開いて人が入ってきた足音がしたのに、誰もいなかったということもありました。それはその場にいたクラスメート全員が体験しています……。
●トイレで用を足していると、後ろから肩を叩いてくるやつがいて地味にウザかったこともありました。いい加減腹が立って舌打ちしたら、一緒にいた友人に「なにイラついてるんだ?」と怪訝な顔をされましたが……。

理香先輩に相談すると「ごめんねー、でも私にはどうしようもないから……」と、申し訳なさそうに言われました。
「そうですよね、すいません」
「とにかく反応しちゃダメ、そのうち向こうもどっか行っちゃうから」

「はい、わかりました」
実際、無視しているうちにそれらの事象はいつの間にか止んでいくのです。

なにもできない、といいながらも気にしてくれているのか、理香先輩はよく声をかけてくれました。
「このあいだ言ってたアレ、どうなった?」
「もう居なくなりました、それに結構慣れてきましたし」
「うん、そうやって落ち着いて対処してれば、諦めてくれるから……でもあまり油断しないようにね。〇〇くんが私と間違えて声をかけそうになったヤツみたいな、たまにああいうタチの悪いのが居たりするからさ」
「それが困るんですよねー……例えばいますぐ部を辞めて、先輩から離れたら目をつけられなくなりますかね?」
「うーん、同じ学校に通っている限り状況は変わらないと思うけど……何だったら退部する? もしかしたらそういったことはなくなるかも知れないよ、保証はできないけど」
「いえ、スルーするコツもわかりましたし、大丈夫っす」
こんなやりとりをしながら部活を続けました。
しょっちゅう親しげに話をしている私と理香先輩の仲を妙に勘繰る部員やクラスメートもいましたが、話している内容を知ったらどんな反応をしたでしょうか。

力の強い人のそばにいると、共鳴してこちらの能力もレベルアップするとよく聞きますが、たしかに理香先輩とかかわるようになってから私自身のそういう力も強化されているようでした。
害のあるモノとないモノが大雑把には見分けられるようになったり、見ないでおこうと思えば、完璧にではありませんが感覚を遮断できるくらいにはなったのです。
ただ、自己主張の強いヤツには効き目はありませんでしたが。
一度、道場で雑巾掛けをしているときに、長い黒髪、青白い顔に恨めしげな表情、白い着物といった、見るからに『ザ・幽霊』といった、いでたちの女が目の前の壁からいきなり出てきたときは肝をつぶしました。
思わず悲鳴をあげそうになったとき、ガターン、バターン、と大きな音が道場に響き渡りました。
その瞬間、音に驚いたのか、女はふっとかき消えたのです。
私を含めた部員全員が何事かと見ると、理香先輩の足元の床に弓が三張ほど倒れていて、「すいません、手が滑って落としてしまいました」と、申し訳なさそうに頭を下げていました。
先輩は「もっと慎重に取り扱うように」と、顧問の先生に注意されていました。
「さっきは、ぼくを助けるためにわざと音を立ててくれたんですよね、ありがとうございました」
あとで私が礼を言うと「あんないかにもな見た目で出てくるなんて悪趣味だよね……もう大丈夫、いなくなったから」
と、先輩は笑っていました。

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