嫌いだった子

私が小学生のときに、大嫌いな子がいました。

その子は学校のガキ大将的な人物で、よく私は虐められました。

大柄で力の強い男の子だったのですが、私はよく髪をひっぱられたりして、かなり嫌がらせをされた覚えがあります。

そのせいで、その子のことは大嫌いだったのです。

私はその子が嫌いなあまり、勉強に打ち込むようになりました。

いい学校に入れば両親も喜ぶという考えもありましたが、それよりもその子のいない学校に通えると思ったのが大きかったです。

無事に受験に成功し、私は嫌いな子と違う学校に行けました。

小学校卒業の日に、「合格おめでとう」とその子に声をかけられたけど、あまりに嫌すぎてその子から逃げるように無視したことを覚えています。

それから何の連絡も取っていませんでしたが、中学2年のときにその子が不慮の事故で亡くなったと聞きました。

それを聞いても私は何とも思いませんでした。

冷たいかもしれませんが、嫌いだった子がどうなろうと関係ないと思ったからです。

けれど、その話を聞いた数日後に不思議な電話がありました。

私の携帯に知らない番号から電話があり、とりあえず出てみたらしばらく無言の後に、「…ごめん」と言われました。

そのまま電話は切れてしまい、相手も不明で奇妙な気持ちになりました。

そんなことをなんとなく覚えていたのですが、私は20の成人式で思ってもない話を聞きました。

友達から嫌いだった子の話が出て、小学生のときにその子は私が好きだったと言われたのです。

そんなこと微塵も感じなかったと言ったら、知らないのは私だけだったと呆れた顔をされました。

どうやら私が嫌いだった子は私が好きで、つい虐めて気を引こうとしたらしいです。

今振り返ったらそうだったかもしれないと腑に落ちることがたくさんありました。

そして中学に入学して、ずっと私を虐めたことを後悔していたそうです。

卒業式の日に無視されたことをずっと引きずっていたと聞きました。

あの電話のことを私はふと思い出して、そういえば嫌いだった子の声に似ていた気がすると思いました。

もしかして私に謝れなかったことが、その子の心残りだったのかもしれません。

何年も嫌いだった子ですが、今はそうでもありません。

今は心安らかに眠っていてほしいと思っています。