闇を感じる前任者

今からかれこれ20年くらい前のことです。本社から支社へ社員を派遣しては呼び戻し、新しい社員を派遣するシステム会社に所属していました。

本社は都会、支社は田舎で、そう決められているわけではないのですが、独身の人が派遣されていました。さほど大きな会社ではないので、数年、働いたころに私も声をかけられ、行くことになりました。

本社にいる時は実家から通っていましたが、支社は遠くて会社が支社に行く人用に借り上げているお世辞にも新しいとはいえないアパートに住むことになりました。

ちなみに、私の前に住んでいた人は親しくはないけれど、顔は知っている3年上の先輩でした。超美人という訳ではないけれど、すっとしていて綺麗な人でした。引継ぎなどで話しても感じが良くて、初めての一人暮らしが中古の年季の入ったマンションとはいえ、この人の後ならきちんとしてそうと思いました。

支社に転属になる数日前、私はそのアパートに入りました。
年季は入っているけれど綺麗でした。家具なども、これまで来た人たちが残していったものがあって、買わなくて大丈夫でした。とはいえ、一応、掃除をと思い掃除をしました。すると、色々なところから針が出てきました。

最初に見つけたのは冷蔵庫です。冷蔵庫の中をふいたところ、扉のパッキンのところにべたつきを感じました。
除菌シートを使いパッキンの隙間をなぞるとチクンとしたのでそれを取ると、縫い針でした。

それから、鏡台の引き出し、トイレのすみ、食器棚の中、なんやかんやで10本は出てきました。

さすがにこうなると気持ち悪いと感じました。

あーっと思っていると、最後にソファのクッション。気になってぐいぐいと押すと、これまたチクンとして発見しました。その日はもうそのまままんじりと朝がなるのを待ちました。

翌日、私がしたことは、ベットのマットレス、寝具、クッションを新しくすることと、鍵を変えることでした。
これまでの人が残して言ったものとはいえ、会社の備品に当たるかもと思ったのはその後でした。とはいえ、気が付いても、前任の先輩がそれをしただろうことが濃厚なので、ここは言わずにおくのが良いと判断しました。

私は、支社の人に前任の方、すっとしていますよね、どんな感じの方だったんですかと聞きました。そうそう都会的な感じよねとプラスの評価でした。

本社に支社から言った時にも会ったのですが普通に素敵です。でも、彼女が住んでいた家からはいたるところから針が出てくるのです。

数年後、本社に私が戻ると、彼女はもう退社していて、本当のところはもう確認仕様がありません。

ただ20年経った今も不思議で若干闇を感じる出来事として記憶しています。