奇々怪々 お知らせ

意味怖(意味がわかると怖い話)

件の首さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

すっきりリフォーム
短編 2022/10/26 22:35 1,235view

 投資用に中古の一軒家を購入した。
 とあるそれなりの地位のある画家が住んでいたというその家は、作りは悪くないものの、良い間取りとは言えなかった。
 構造は保ったままでリフォームし、間取や導線を改善して貸す事にした。
 図面を確認するうち、台所と風呂場の壁が、妙に分厚い事に気付いた。

 作業を監視するような意味合もあって、私は古い壁の解体工事に立ち会う事にした。
 部屋2つの壁が抜かれた後、台所の壁の番になった。
 壊す前、壁を軽く叩いた作業員が、やや怪訝な顔をした。だがそれも束の間、彼はハンマーで壁を叩いた。
 割れた壁の向こうから出て来たのは。

 絵だった。

 完成した油絵のキャンバスが13枚出て来た。
 死体でも埋まっているんじゃないかという、チラチラと浮かんでいた不安は、無事に払拭された。
 そんな事があれば事故物件だ。家賃をいくら値下げしなければならないか。
「これ……」
 作業員が壊した壁の中から、それを拾い上げた。
 骨だった。
 人間の指らしき小さな骨が、キッチンペーパーのようなものに包まれて埋め込まれていた。
「……作業中に誰かが傷しただけだろ」
 私は財布から1万円札を出し、作業員に握らせた。

「そうっすね!」
 作業は続行された。

 絵は保存状態が悪い上に絵柄も家主の画家の模倣ばかりで、値段は全く付かなかった。
 家の借り手は4度ついたが、いずれも霊を見ただの何だのと言って退去してしまい、今は空き家だ。
 他の部分の骨がまだ残っているのかも知れないが、そもそも霊などというものが非現実的だ。
 例の作業員が事故に遭ってはいるが、骨を隠滅した事と結びつけるのは飛躍し過ぎだ。
 それよりも、家賃収入がない事の方がずっと深刻だ。
 だから。忘れよう。
 今も耳元で聞こえる声の事なんて、忘れてしまえば良いのだ。

1/1
コメント(1)
  • 山際元大臣のように、きれいサッパリ忘れましょう。

    2022/11/05/19:13

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。