たまご肌

　子供の肌なんてのは綺麗なたまご肌だと思っていた。
　３歳の娘が、パンツのゴム部分のかぶれをかゆそうにしていた。かゆみ止めを付けたが、なかなかかゆみは治まらないようで、目を離した隙に引っ掻き始める。

　娘の爪をギリギリまで磨いて、ツナギの服を着せたが、効果はない。風呂に入れても駄目、消毒で拭いても駄目、結局掻いてしまう。
　娘の肌はひっかき傷だらけで、血が滲む。こんな状態では、服を着させる度にシミが出来てしまう。
　解決方法がないかネットで調べてみたところ、新型のピーリングの情報があった。
　古い角質を酸で弛めて、新しい角質を作らせる方法のようだ。これなら、かゆみのある部分を丸ごと取ってしまえるだろう。
　調べていくうち、英語のサイトに辿り着いた。
　角質を剥がしている写真で、一番効果がありそうなものをカートに入れた。

　ようやく品物が到着したので、早速娘に塗ってみた。
　流石に刺激が強いのか娘が泣くが、泣きたいのはこっちだ。

　数分置いて、肌を擦り古い角質を落とす。
「わあぁ……！」
　古い角質がどんどん落ちて行く。
　これで綺麗な新しい肌が出来る。
　良かった。
　血が出るけど、歯茎みたいに悪い血が鬱血していたのだろう。
　どんどん古い角質が出続ける。
　かゆみが治らなかった訳だ。
　毎日風呂でしっかり擦っていたのに、子供は汚いものだ。
　どんどん角質が落ちる。

　どんどん。
　どんどん。
　生まれたてのツルツルの肌はどこに行ってしまったんだろう。
　合ってないのだろうか。
　いや、５万円もしたんだ、悪いワケない。
　それから、角質を落としに落として。
　ようやく、指先がつるりとした肌に触れた。
「良かったね。綺麗になったよ」
　返事がない。
　もう。
　返事をしない子は嫌いって言ってるのに。