「ここはいる」スタジオ

10年前、私と友人Aちゃんはタレントを目指し夜遅くまで歌やダンス、演技のレッスンをする日々を過ごしていました。

レッスンスタジオは事務所が提携している制作事務所の1部屋で、近くでトラックが通るとミシミシ揺れるようなビルの中にあります。
古い建物なので仕方がないと思っていましたが、時折テーブルやハンガーラックだけが揺れる時がありました。
スタッフさん曰く「ここはいる」場所なのだそうです。

これは友人Aちゃんが体験した怖い話です。

ある日、Aちゃんがレッスンの後、夜遅くまでスタジオに残っていました。
他の子は帰り、スタッフさんも準備のため外出。
スタッフさんからは、鍵は掛けなくて良いから電気だけ消して帰るように、と言われたそうです。

誰もいないスタジオでAちゃんが1人でのんびりしていると、突然テーブルだけが激しく揺れ始めます。

地震だと思い、周りを確認するも他の物は揺れていません。

焦りながらも電気を消して建物を出たAちゃん。
外に出てホッと一安心。
ふと建物を見ると、確かに消したはずの電気がついていました。

これは本当にあったことなのでこれ以上のオチはなく、話はここで終わります。
しかし他にも、録音ルームで1人で昼寝をしている子が「女の人に足を引っ張られた」と寝呆けながら出てきたこともありました。
タレントを目指す子というのは感受性豊かな子が多く、この手の話は珍しくありません。
その後、ビルは老朽化により壊され、そのスタジオは全く別の場所にあります。
あのスタジオには何が「いた」のか、今もわからないままです。