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心霊

足が太いさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

「俺が見えてるんだろ」
長編 2022/06/18 00:21 2,722view
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1人きりで、残業していた時のこと。
その頃の私は、写真のプリントをするお店でアルバイトをしていました。
バイト先は写真のプリントの他に年賀状印刷も取り扱っていて、私はその日、21時にお店を閉めた後も残って、1人きりでお客さんから注文を受けた年賀状を印刷していたのです。

バイト先はショッピングモールなどの施設に入っているようなものではなく、街中にある店舗型でした。
電車通勤だったのですが、バイト先から最寄り駅まで徒歩5分で行けるので、終電ギリギリまで残業していたのです。
23時30分頃になってようやく作業がひと段落ついたので、帰ることにしました。
それまで座っていた椅子から立ち上がり、作業していた机の上を片付けていると、お店の外から「おおい!」と野太い男性の声が聞こえてきたのです。

閉店後はシャッターを閉めて、お客さんがお店の中に入って来れないようにしていたので、私は男性が帰るまでじっとして、やり過ごすことにしました。
シャッターを下まで閉めてしまえば、店内の明りがついていたとしても外からは分からないので、男性も諦めて帰るだろうと思ったのです。
しかし、男性はシャッターを叩きながら、「おおい、開けてくれ!おおい、おおい!」と呼んできました。
シャッターを叩くガシャガシャという音と、店の奥にまで響いて聞こえる大きな声に、怖くなってしまいました。

23時40分、23時50分…、終電の0時を過ぎても外の男性は叫び続けています。
このままでは家に帰ることも出来ず、本当に困ってしまいました。
どうしようかと思っていると、0時10分を過ぎた頃にピタリと静かになったのです。
やっと諦めて帰ったのかと思って、5分程待ってから外に出ました。
辺りを見まわすと誰もいなかったので、安心して外からシャッターに鍵を掛け、駅まで歩いて行ったのです。

とは言っても、もう終電は過ぎています。
お金がかかるけれどバイト先から家まで歩いて30分はかかるので、それは面倒だからと駅前のタクシー乗り場へ行きました。
平日の夜だからかすぐにタクシーが掴まり、運転士に「○○(家の最寄り駅)まで」と目的地を告げると、タクシーが発進しました。
眠いけれどここで寝てしまうと目的地に着いた時に起きてないと困るので、スマホを触りながら必死に目を開けていました。
タクシーに乗って5分程経った頃、運転士がしきりにミラーで後ろを確認しているのに気づいたのです。
どうしたのかと思って、横や後ろの窓の外を見ましたが、とくに変わった様子はありません。

だから気にしないようにしていたのですが、運転士の方から「あの、お客様、横に座っている男性が苦しそうですが大丈夫ですか?」と、聞いてきたのです。
私が「え?横に?あの、私1人しか乗っていないはずですが…」と返すと、運転士は「…そうですか、あれ?見間違いだったかもしれません」と言ってそれ以上何も言わなくなりました。

でも、運転士はそれ以降もやたらとミラーで後ろを、というか私の座っている後部座席シートを確認する素振りを見せるのです。
だから私も怖くなって何度も横を確認したのですが、やっぱり私1人しか、そのタクシーには乗車していません。
そうこうしているうちに目的地に到着し、料金を支払ってタクシーから降りると、タクシーは逃げるようなスピードで走り去っていってしまったのです。
あまり栄えていない町なので、終電を過ぎた駅前は閑散としていて異様な静けさがあります。
こんなことなら家の前までタクシーで送ってもらえばよかったと後悔しながら、駅から徒歩10分程かかる家まで急ぎ足で歩いていきました。

誰もいない、静まった住宅街をわき目も振らず歩いていると、ふいにあの声が聞こえてきました。
「おおい、おおい!俺が見えてるんだろ!?おおい、待て、おおい!」
バイト先でシャッター越しに聞こえたあの野太い男性の声です。
すぐ後ろから、まるで私の後を追いかけるかのようについてくる声に怖くなり、私は走って家まで逃げました。

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コメント(1)
  • お疲れさまです

    2022/06/20/22:24

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