知らない女の子

これは僕が小学生だった時の話です。当時の僕は今とは正反対の性格で、いつも元気いっぱいに外で遊ぶ活発な少年でした。

そんな僕には仲良しの友達がいたんですけど、その子はちょっと変わった子でした。

その子の名前はA君としますね。

A君はいつも一人で行動しているような男の子だったのですが、なぜか僕によく懐いてくれて、一緒にいることが多かったのです。

ある日のこと、その日も僕たちは二人だけで遊んでいました。でも、その時の僕は虫取りに夢中になっていたので、A君のことはほったらかしにしてたんですよ。そしたら突然

「ねえ」

って声をかけられました。振り返るとそこにA君の姿はなく、かわりに女の子の顔がありました。

それが普通の人間ではないと気づいた時にはもう遅かったんです。

悲鳴をあげて逃げ出そうとしましたが、金縛りにあってしまい身動きが取れません。すると、今度は耳元で囁くように声が聞こえてきました。

「こっちに来て……」

どうやら僕をどこかへ連れて行きたいみたいです。なんとかして逃れようと必死にもがきましたが無駄でした。そしてそのままずるずると引きずられていったんです。

連れて行かれたのは近所の神社でした。そこで彼女は僕を解放すると、またすぐ消えてしまいました。

それ以来彼女とは一度も会っていないのですが、あの時見た彼女の顔だけは今でもはっきりと覚えています。

あれは間違いなくこの世のものではない、おそらく幽霊だったと思います。

A君は先に帰ってました。