未練の悪戯
投稿者:寇 (4)
不意に俺の中で恐怖心が和らぐと、俺の体からスッと力んでいたものが消えて自由が効くことに気づいた。
俺は上半身を起こすと、ズリズリと俺の体にしがみつこうとしている祖父の腕を恐る恐る掴み、しっかりと手を取って握りしめる。
「ごめん、爺ちゃん。死に目に会えなくてごめん。ずっと帰ってこなくてごめん。寂しかったよな」
勇気を出して震える声で語りかけると、体にしがみついてる祖父の力が弱まった気がした。
それどころか、祖父は顔を腰元に埋めたまま腰に手を回して抱き締めてくれた。
やはり寂しかったんだ。
俺も祖父を抱き締めてやると、そのまま「ごめんな爺ちゃん」と何度も謝り、祖父が落ち着くまでその体勢のまま赤子をあやすように背中を撫でる。
こんなこともあるんだな、と随分と小さくなった祖父の背中を眺めていれば、不意に部屋の奥、つまり寝台が置いてあるリビングに目が向いた。
そこには朧気だが誰かが寝台から体を起こしている状態で俺の方を向いているのが見えた。
暗くて表情を窺えないが見覚えのあるシルエットが何か訴えかけるように俺へ手招きしている。
少し怪訝な面持ちで眺めていれば、
プルルルル!
と、突然備え付けの電話がけたたましく鳴り響く。
俺は咄嗟に肩を跳ねたものの、電話はちょうど寝室の棚の上、俺が手を伸ばして届く位置に子機が置いてあったから反射的に出てみる。
「はい」
『あ、○○です。夜分遅くに申し訳ありません。先程頼まれましたので折り返しご連絡差し上げたのですが、どうかなされましたか?』
電話越しの声は話し合いの席に居た葬儀の担当者だった。
ただし、受話器越しに喋っている内容はよく理解できなかったので、思わず聞き返してしまう。
「え、何のことですか?」
「……え?あ、あの、今しがたそちらからお電話を頂いて、折り返し電話をしてほしいと仰られたので……」
俺は再度担当者の話を聞いても理解できずにいて、そのまま無言で首を傾げていた。
「あれ?でも声が……。失礼ですが、今お一人でございますか?」
すると、担当者が少し独り言のようにぶつぶつ唱えたと思えば、俺が一人かどうか訊ねてくる。
奇妙な事を言うもんだ。
俺がここで一人宿泊することは担当者もその場に居たから知っている筈だ。
「一人ですけど……、あ」
思わず普通に答えている途中で俺は視線を落とす。
そうだ、俺は今祖父の幽霊と抱き合っている。
一人寂しく亡くなった祖父をあやしている一風変わった体験のせいですっかり恐怖心が抜けきっていた。
その証拠に祖父も落ち着いたのか、随分と大人しくなったものだ。
おじいちゃんの未練かと思いきや…
面白かったです
おじいちゃんは亡くなっても優しかったね
「おう、○○。元気してたか」
「ああ、それなりに。それより爺ちゃんは?」
この会話絶対間違えてるやろ。母親と子供の会話じゃない。
作者、父親との会話と勘違いしてたっしょ。