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心霊

ぴさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

つんつくてん
長編 2022/05/24 18:49 3,573view
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私が夫と結婚し、嫁いできた地域は驚くほど田舎でした。

ただそのおっとりした空気感は好みのものでしたし、夏になるとさまざまな祭りが開催されて、とても楽しかったです。

狛犬の被り物を被った人がかつかつかつと音を立てて通ったり、神輿を担いだ人が雄たけびを上げながら走っていったり、鳴子を鳴らして歩いたり、とにかく夏になるといろんなお祭りで騒がしかったです。

家の前の通りはそういう祭りで通る道としてもよく使われており、私は何か祭りらしきものがある度に、外に出てその様子を眺めていました。こういう祭りの賑わいが好きだったのです。

その日も、なんだか外が騒がしいなと思って、耳をそばだててみたのです。

すると「つんつくてん」と何か太鼓の音が聞こえました。

「つんつくてん」「つんつくてん」「つんつくつくてん」と軽快な音が鳴り響いて、なんだか心が騒ぎました。

初めて聞いた祭りの音で、ちょっと不思議には思ったのですが、なんとなくその音に導かれるように、窓の外を覗いてみたのです。

すると、きつねやたぬきの被り物のようなものをした一行が前の通りを歩いているのが見えました。

丁度二階にいたので、その一行がとてもよく見えたのです。私はしばらくその行列を眺めておりました。

きつねやたぬきの被りものを被ったお祭りなんて、私は嫁いできて一度も見たことがなかったです。

さらにただ太鼓を叩いて歩いているだけで、とても地味な祭りだと思いました。

ただ「つんつくてん」という太鼓の音がなんだか耳になじみがあって、それでなんとなく近くで見たくなったのです。

だから慌てて二階の階段を駆け下りて、そして玄関から外に出ました。

そしたら急に太鼓の音がピタッと止まってしまって、びっくりしました。

玄関から外に出ると、さきほどの行列は最初から無かったかのように消えていました。

行列が通っていた道まで出たけど、たぬきときつねの被り物を被った人たちはいなくなっていました。

「何の祭りだろう」と私は好奇心を刺激されました。分からないからより知りたくなりました。

だからその夜に同居していた姑さんや旦那に聞いてみたのですが、誰一人としてその祭りの存在を知っている人はいなかったです。

そうしてしばらくして昼食を片付けているときに、あの太鼓の音が聞こえてきたのです。

「つんつくてん」「つんつくてん」「つんつくつくてん」と軽快なあの祭りの音でした。

私は次こそはと思って、急いで玄関を開けました。

開けた瞬間、突風のような風が家の中を通り抜けた気がします。私は思わずぎゅっと目を瞑りました。

はっとしてまた家の前を覗きましたが、この間と同じで行列はもういなくなっていました。

丁度近くを歩いていたご近所さんに遭遇し、「さっきの太鼓の祭り見ました?」と聞いてみたけど、何のことだか分かっていないような不審な顔をされてしまいました。その日は聞き間違いだと思ったのでした。

それからも度々、気が付くと家の外から「つんつくてん」「つんつくてん」「つんつくつくてん」とあの音がすることがありました。

毎日ではありませんが、朝も昼も関係なしに頻繁に音がしていたので、私は祭りの練習なのかと思いました。

こんな祭り知らないかと何人かの人に尋ねてみたけど、誰一人知っている人はいなかったです。

それどころかたぬきやきつねの被り物をする祭りというもの自体に覚えがないみたいで、みんな私の話を不思議そうに聞いていました。

その祭りはいつも私が玄関を開けると、止まってしまうのです。

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コメント(1)
  • 百鬼夜行ですかね

    2022/05/25/17:45

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