おそらく事故物件

当時、大学生だった私には一人暮らしを始めたばかりの友人がいました。大学の友人は初めての一人暮らしということでとても嬉しそうでした。

友人が引っ越して数日が経ったころでした。大学で久しぶりに友人に会うと、見るからに顔色が悪く、肩を落として見るからに元気がなかったのです。心配して尋ねてもなにも答えてくれず、俯くばかり。しかし、あまりにもしつこかったのか、根負けしてここ数日のことを語り始めてくれました。

友人のマンションは築年数が古く、彼にとっての初めての夜に起きたのです。ベッドで浅い眠りに落ちかけたころ、何かの気配を感じて目を覚ますと、急に金縛りにあって体が動かなくなったそうです。同時に足首を誰かに掴まれる感覚もあったそうですが、そのときはなにかの気のせいかもしれないと思い、眠りについたらしいです。

翌日、昨晩のことをあまり考えずに眠りにつくと、またしても違和感を覚えて目を覚ましたと言います。今度は人間の指と思わしきものが左膝に食い込んでいました。しかも引っ張られている感覚もあったそうです。しばらくして金縛りは解けたようですが、その日は眠れなかった、ということです。

翌日の夜、ベッドに入っても寝付けずにいると、またしても金縛りにあったそうです。今度は腹部に指の感触があり、「ふふふ」という不気味な女性の声がしたそうです。そして恐る恐る目線をその方向へ向けると、長い髪の女がいたと言います。表情は長い髪の毛に覆われて見えなかったそうですが、明らかに人間ではない雰囲気を醸し出していた。殺されると感じた友人は心の中で「やめてくれ」と叫びました。その瞬間、友人は朦朧とする意識の中、女性の気配はなくなり朝を迎えていたと言います。

それが友人から聞いた数日間の全貌でした。友人は引っ越しをすることにしたそうです。