私は誰に叩かれたのだろう

私は小学校6年生の時に母を亡くしました。
小さな年の離れた妹が2人いたので、父は男手ひとつで3人の娘を育てる自信もなかったようで、知り合いの勧めもあり、母が亡くなった年末には、現在の母と連れ子2人兄妹との再婚をすることになりました。

その翌年のお盆に、家族全員でお墓参りへ行った時の話です。
田舎なので、遠く離れたお互いの家族、親戚のお墓をハシゴして周り、最後に私の母のお墓参りをしました。

お供物のお菓子を見ながら、『次はどれを食べようかな〜』と考えながら、拝んでいたその時、私は、自分の頭の右後方から、ものすごい勢いで叩かれたのです。叩かれた感覚はまさに人の握り拳のようでした。
一瞬の事で何が起きたのか分からず、『痛いな〜』と後ろを振り返りました。

後ろにいた妹が驚いた表情で『今、叩かれたんだよね？姉さんの頭の上を人の手のようなものが飛んで行ったよ』と言うのです。家族の誰かのいたずらだと思っていたので、妹の言っている言葉が最初は理解出来ませんでした。
しかも、そこは墓地のちょうど真ん中で、知らない人が私を叩いて逃げるような場所も無いのです。それに気づき、家族全員呆然と立ち尽くしました。

もしかしたら、食べたいお菓子を選んで、しっかりと拝まなかったことを戒めるために、亡くなった母が、手だけ出てきたのかなと思い、そうだったらいいのになと母を恋しく思いました。
ただ、そうでは無かったら・・・それだけは、あまりに恐ろしいので考えないようにしています。
それからお墓参りに行く度に、あれは何だったのだろうと思うのです。