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不思議体験

どっかの誰かさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

深夜高架
短編 2020/12/24 11:33 2,269view
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コロナで職失くしてから自暴自棄な引きこもり生活送ってたんだけど、このままじゃダメだと思って、せめて夜だけでも外に出ようと散歩はじめたんだよ。
昼間は近所の目もあるし、なんか後ろめたさみたいなのもあって、外出する気にはなれなくてさ。

はじめはなんとなく家の近くやコンビニまでをぶらぶらしてたんだけど、少し足をのばすと、電車が走る高架鉄道が東西にずーっと続いてく地域に出るんだ。
高架下はガラガラの駐車場になってて、挟むようにして緑のフェンスもずーっと続いてて。
遅い時間に歩くと本当に静かな通りで、道の反対側にずらりと建ってる長屋の民家も、みんな寝静まってるのか真っ暗で。街灯もあんまり点いてないからシラフだと正直怖いと思うんだけど、コンビニで酒買った帰りに飲みながら通ると、酔いのせいもあってか意外と雰囲気良く感じちゃって、たまにコース変えながら歩いてたんだ。

昨日の夜も同じような時間に家を出てコンビニでストロングゼロ買って、いつもみたいに飲みながら歩いてたんだけど、丁度そのタイミングで、俺の背中側から電車が走っていったんだよ。俺が最寄り駅にしていた方向に。
ガタン、ゴトンって音につられて見上げると結構な乗車率でさ、すっかりニート化した頭で『こんな時間までご苦労さんですっ』て馬鹿にしながら車窓を眺めていたんだけど、目を凝らして見るとあることに気付いて、思わず飲む手を止めちゃったんだよ。

ドア側に立ってる人や吊革を握ってる乗客たちが、みんなこっちを向いてんの。それもなんか、ぼーっとしてるような無表情で。スーツ姿のサラリーマンやOLに、若い兄ちゃん姉ちゃん。向こうむいて座ってる乗客は後ろ姿だからわかんないけど、立ってるやつらがみんな俺を見つめてた。何度も何度も、目が合った。

夜間で車内の電気は点いてるから、気のせいや見間違えたってことはない。
くすんだような黄色の灯りに照らされてる無表情って本当に不気味でさ、そんな景色が何両も通り過ぎていくわけだから、気味が悪いのに何故か目が離せなかった。
最後尾の車掌室は電気が点いてなくて、ゆらゆらと揺れてる黒い影みたいなもので、辛うじて車掌は居るんだなと判る程度。行き先を書いてあるはずのパネル?も点いてなかった。

スマホなんかも弄らずに、“たまたま乗客がみんな同じ方を向いて立って窓の外を見つめてる状況”って、ありえないと思うんだよね。
電車が走り去ると辺りも静まりかえって、尚且こんな通りだから、途端に怖じ気付いて足早に帰った。酔うに酔えなくなって。

帰りながら、『いつも似たような時間を通っていたのに、電車と遭遇したのは今日が初めて』だったっていうのと、『終電はもうとっくに過ぎていた』っていうのを思い出しちゃって、とうとう眠れなくなったから、覚えてる限りの記憶を今書き残してる。

緩やかなカーブへ吸い込まれるように消えてった電車と乗客たちの顔は、暫く忘れられそうにない。俺はもう、あの高架沿いの道を二度と通らない。

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コメント(4)
  • 怖い…乗客たちはどこに吸い込まれていったんだろうか…

    2021/03/01/03:48
  • ストロングゼロの呪いやろか?
    高架上走行の乗客の目線まで判るなんて

    2021/04/04/20:18
  • 高架との距離や高さがどのくらいあるかにもよるけど、見えるでしょ

    2021/04/14/03:48
  • 福知山線沿線やないやろな?

    2021/07/02/21:03

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