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不思議体験

イエティさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

古い旅館と創業者の霊
長編 2021/05/10 13:01 7,749view
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ただ、さっきの中庭からの物音は野良猫とか風で、実際何もいないんじゃないか?と思い始めた。
そう思いたかった。
中庭にしか逃げ道はないし、何もいないんだったら今すぐ飛び出したい。

俺は思い切ってカーテンを手に取り開けようとした。

ドンドンドンドンドン!!とものすごい音がしたと同時に、窓の向こうの何かと目が合った。

中庭には幽霊?部屋の入口には黒い靄。
逃げ道が完全に閉ざされた俺たちはもう祈る事しかできなかった。

比較的落ち着いていたSは、Youtubeでお経の動画を検索し流し始めた。
すると黒い靄は動きをやめ、その場に留まった。

もう、お経を流しながら固まって朝を待つしかない。

部屋の隅に固まり、男3人でガタガタ震えてた。

体感では3時間くらいに感じたが、時間的には30分ほど経った頃、一つ問題が発生した。
さっきまで釣りをしていた俺たちは、ライトやら音楽やらに利用してスマホの充電を消耗していた。

確か、俺とTは20%くらいで、Sがお経を流していたせいで10%を切っていた。
幸いコンセントはすぐそばにあったが、充電ケーブルは黒い靄がある入り口のバッグに入ってる。

何か策はないかと手元を探ってみると、電話があった。
「フロントは7番まで」と書いてあり、フロントの人なら何かこの現象の対処法を知っているかもしれない。
過去にも似たような現象が起きていたかもしれないし。
俺は受話器を手に取り、7番を押した。

正直、幽霊が電話に出るんじゃ?とか、この旅館は既に実在していなくて、俺らは幽霊のしわざで幻の旅館に迷い込んだのか?とか、電話を掛けながらマイナス思考がぐるぐると頭を巡っていた。

ガチャ、と音がし、案内をしてくれたお姉さんが「どうされました?」と。

「中庭からドンドン窓を叩かれたり、部屋の入口に黒い靄が見えるんです。
 似たようなこと今までなかったですか?どうすればいいですか?」

というと、「おめでとうございます!!よかったですねえ!」
と、訳の分からないことを言われた。

ガチャンと電話を切られ、お姉さんが部屋に入ってきた。
黒い靄をすり抜けたと思うと靄はなくなっていた。

どういうことですかと尋ねた。
以下、簡単にまとめます。

黒い靄は旅館に泊まる釣り客の前によく現れるそうだ。
お客さんから度々通報と言うか報告があったらしく、先々代の女将さんが島の僧侶?を呼んでみてもらったところ、「ああ、〇〇さん(創業者)だね。見守ってくれてるんだね」と言われたらしい。

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コメント(1)
  • 上手いなぁ、最後に残る正体不明の恐怖、好き

    2021/05/11/23:23

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