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不思議体験

キミ・ナンヤネンさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

あおり運転未遂
短編 2021/04/07 01:29 3,678view
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とある駅前の大通りを車で走っていた時の事だ。
次の信号を右折しようとすると、ちょうど対向車の白いワゴン車も左折しようとしていた。
ほぼ同時に、同じ道に2台が入っていく感じになった。

こんな時は左折車優先だから、俺はスピードを落とし、白ワゴンを先に行かせることにした。
白ワゴンが角を曲がった後に続いて行くつもりだった。

ところが、白ワゴンは曲がっている途中でなぜかブレーキをかけて止まった。
俺はあわてて急ブレーキをかけて止まると、その直後に白ワゴンは発進した。
あとほんのわずかのところで、距離にすると50センチくらいだろうか、あやうくぶつかるところだった。

いつもなら駅が近いこの辺りは人通りが多いのだが、この時に限っては人が少なかった。
特に、この曲がり角には歩行者は誰もいなかった。いなかったはずだ。
だから、白ワゴンが曲がり角の途中で止まってしまうというのが理解できなかった。
白ワゴンの後ろに付いて走っていると、白ワゴンの運転手がなぜそんな事をしたのか考えれば考えるほど怒りが増してきた。

もし次の信号が赤になったら車を降りて運転手の所へ行って一言言ってやろうと思っていた。
もしかしたら運転手は怖い人で、返り討ちに遭うかもしれないとも思ったが、運転手に何か言わずにはいられなかった。

運よく信号が赤になり、白ワゴンの後ろに並んで信号待ちをする格好になった。
そこで、俺はすかさず車を降りて白ワゴンの運転席へ向かった。

白ワゴンの運転席の窓は半分だけ開いていて、俺は軽く車の中を覗いてみた。
運転手は見たところ30代半ばの営業マンといった感じで、後ろの席には後輩であろう若手が2人座っていた。
車には合わせて3人乗っていた。

俺はドアをノックして
「ちょっと今のは危なかったですよ。なんで止まったんですか。ぶつかるところでしたよ。何かあったんですか。」
白ワゴンの運転手にとってはさぞ怖かった事だろう。彼は当たり前に運転していただけなのだ。
俺の言葉に運転手はこう答えた。
「いや、あの角に人がいたから。その人が飛び出そうとしていたから止まっただけですよ。」

俺にはそんな人は見えなかった。運転手は続けて
「なあ、そうだったよなあ。あの人飛び出してこようとしてたもんなあ。」
こう言うと、助手席の方に首を振って同意を求めた。
運転手は、誰もいない、誰もいないはずの助手席に向かって話しかけているのだ。

え?
俺は一瞬あっけに取られたというのか、キョトンとしたというか、どう反応していいかわからなかった。
運転手は誰もいない助手席に向かって話をしているが、一体誰に話しかけているのか俺は混乱していた。
俺は思わず
「だ、誰かいるのか?」
と聞いてみると、運転手は
「あなた、見えないんですか?」
と逆に聞いてきたが俺は何も答える事が出来ず、身動きすら取れなかった。
運転手は、変な人だなあと言わんばかりに後ろの二人と目を合わせ、また前を向いた。

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コメント(3)
  • 新手の煽り運転逆襲方法ですねぇ!
    今度機会があったら使ってみます!

    2021/04/07/02:47
  • 少し気になった所があったので、加筆・修正しました。
    作者より

    2021/04/07/19:51
  • 一般道の、しかもそもそも速度を出してはならない交差点での右折の途中で急ブレーキ踏まされたぐらいで、文句を言わなくては腹の虫がおさまらなくなる筆者のメンタルがヒトコワ。

    2021/05/28/09:09

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