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とくのしんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

解体業者の怖い話
長編 2024/07/02 09:08 2,289view
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「それで・・・依頼主っていうのがさ、その生き残った旦那さんなんだよ」
実は事件の数年前に、例の家を建てる際に土地探しをしたことがあった。土地探しだけでなく、住宅ローン関係などのアドバイスもしたそうで、それ故か今度は処分したいと相談があったという。
「田宮さん(仮名)ていうんだけどさ。さっき角ちゃんもまだ売れるだろ?って聞いてきただろ。俺も同じ話をしたんだよ。でもさ、本人が思い出の家に自分たち以外の誰かが住んでいるなんて耐えられないって言うんだ。そりゃそうだよな、だから本人の希望通りに更地にして売ることにしたんだよ。あそこ、立地はいいだろ。売るとなれば更地だったら訳ありでもすぐに売れるからね」
「なるほど・・・そういうわけか」
「田宮さん、一度事務所に来たんだけど見るからに金無さそうで。解体費用は大体300~400万かかるって話をしたんだよ。そしたらなんとか用意できるのが250万て言うからさ・・・ごめんな、角ちゃん。これじゃ泣き落としみたいになっちゃうよな」
それを聞いて角田さんも納得した。腑に落ちた感じがして、逆に人助けをしなきゃという気持ちになったそうで、当初の提案額の200万で請け負うことにした。

「まぁ正直利益なんか出ないよ。俺の仕事はただ壊すだけどさ、それが人助けになるのであればと思って請け負うことにしたんだ」

その1週間後、例の現場にて福田さんと田宮さんと落ち合った。解体に際して色々と確認する事項があったからだ。解体するといってもいきなり建機でバキバキと壊すわけではない。事前に建物や土地について確認したり、敷地に面した道幅や隣家との距離を測ったりと色々とあるらしい。
今回に関しては家財道具は一式処分して欲しいとの要望から、一切合切を解体する旨を伝えた。また、事件のこともあり地鎮祭や解体祓いを行うかどうかの確認も行ったが、田宮さんはそれを断った。
「本当は事が事だっただけに、地鎮祭の類はやって欲しかったんだけどな。でもこっちとしては無理強いできないし、そのまま進めることにしたんだ」

家屋内部の実地調査を行ったが、事件当時のままになっているかと思いきや、綺麗に片づけられていた。警察の現場検証が終わったあと、田宮さんが一人で片づけたそうだ。

「本当は家に入るのも嫌なんですよね・・・」
リビングで角田さんたちに背をむけた田宮さんがポツリと呟いたのが、妙に印象に残っているという。

そうして契約を結び、日程の調整を行った。立ち合いから1ヵ月後にいよいよ解体することが決まった。解体というといきなり重機を入れる印象があると思うがそうではないという。私も知らなかったが、まずは手作業で設備や内装材を取り外したりすることから始まる。家電や家財道具もこの時点で撤去するようで、色々な法律の縛りから分別解体しなければならないことを教えていただいた。

解体作業が始まると、初日から田宮さんがその作業を始まりから終わりまで、ずっと眺めていた。角田さんも撤去物の搬出等があることから危ないことを伝えたが、その都度場所を変えてはその様子を眺めていたという。

「話のなかでさ、夫婦仲がうまくいっていなかったことは言っていたよ。ただそれも事件が起きるほんの少し前のことで、基本的にはうまくいってたらしい。子供も素直でいい子たちだったと田宮さんは言っていた。家族が幸せになれるようにと、希望を持って建てたとも言っていた。その気持ちを考えると本当にやるせなかったな」

そうしていよいよ重機の出番となった頃、角田さんはいつものように作業を眺めている田宮さんを見つけると、家屋の解体を始めることを伝えた。
「いよいよ、家が無くなるんですね・・・」
田宮さんが寂しそうに思い出が詰まった家を眺めていた。掛ける言葉も見つからず、角田さんは一礼して作業に戻る。若い従業員が乗るバックホーが家屋の取り壊しを始めようとしていた。アームが上がりバケットが家屋2階部分をバキバキと壊し始める。
「これまで色んな解体現場に携わってきたけどさ。こう・・・心が締め付けられるようなそんな思いをしたのは初めてだったな」
そんな思いで解体作業を見守りながら、家屋の約半分ほど解体が進んでときだった。

「うああああああああああああああああああああああああああああああ」

背後から絶叫が響いた。その声に振り向くと田宮さんが、凄い勢いで家屋に向かって走っていた。

「田宮さん!あぶねぇよ!」
静止する角田さんの言葉が聞こえないのか、そのまま家屋の中へと田宮さんは姿を消した。田宮さんが家屋に入ったにも関わらず、バックホーの解体作業が止まる気配はない。

「おい!止めろ止めろ!止めろって!!!」
角田さんは従業員にバックホーを止めるよう促した。エンジン音で聞こえないのか、従業員はなかなか作業を止めない。

「バカ野郎!人が入っただろう!止めろって言ってんだよ!」
思い切り怒鳴りつけて、ようやく従業員は角田さんの言葉に気づいた。
「社長、どうかしたんですか?」
「どうかじゃねぇだろ!人が家ん中に入っていっただろう!?」
「え?マジッスか?マジで気づかなかったです」
「気づかなかったじゃねぇよ!エンジン切って降りてこい!」
運転していた従業員を怒鳴り付け、周りの従業員を集めて家屋に近づく。家屋は文字通り半壊しており、そのなかで田宮さんが巻き込まれていないことを祈らざる得なかった。

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コメント(3)
  • 包茎様の後じゃなに出してもダメだな

    2024/07/03/21:52
  • 嫉妬してないで投稿しろよw

    2024/07/03/23:01
  • ↑それなら自分でお書きになってみてはどうですか?

    2024/07/04/09:17

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