奇々怪々 お知らせ

ヒトコワ

綿貫 一さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

狐の窓
長編 2023/12/12 08:43 14,120view
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次に、閉じていた指を開くでしょう? 

最後に、今伸ばした中指と薬指を、反対の手の親指で押さえたら完成! 

ね、真ん中に窓ができたでしょう?」

言われた通りにすると、組んだ指と指の間に、小さな隙間ができました。これがきっと「窓」なのでしょう。

これを覗くと、普通では見ることのできないものが見える。果たして本当でしょうか?

私はなんとなくこわくて、それを覗くことができませんでした。

「じゃあこれから、学校の七不思議の場所を回って、この狐の窓で覗いてみよー!」

おっかながるわたしをよそに、マホちゃんは明るい声で言いました。

冗談じゃありません。

教室の時計の針は午後4時を指し、秋の日は徐々に暮れかかっています。

学校が夕闇に包まれていくなか、マホちゃんとふたり、七不思議が眠る場所を回る?

そして、狐の窓でそんな場所を覗くですって?

まったく、とんでもないことを言い出すマホちゃんです。

マホちゃんは、とてもかわいらしい女の子です。

大きくてパッチリした目。小さな鼻と口。肌は白くて、肩までかかるストレートヘアーも、よく似合っています。

教室だと、それほどしゃべる子じゃありません。休み時間も自分の席や図書室で、静かに本(それはたいてい、おまじないに関するものですが)を読んでいます。

見た目や雰囲気から、クラスの男子たちは、マホちゃんのことを、憧れつつも近づきずらいお嬢様みたいに考えています。

ですが女子たちは、マホちゃんが、おまじないのことになるとすごくおしゃべりで、とんでもなく行動的になる、ということを知っています。

そして、言い出したら聞かない、頑固な一面があるということも。

その時もマホちゃんは、普段は見せない強引さで、わたしの手を引っ張りながら、勢いよく教室の外へ駆け出すのでした。

§

§

わたしとマホちゃんは、日直の日誌を先生に提出するため、いったん職員室に寄りました。

「なんだ、ふたりとも、まだ残ってたのか?

もう暗くなるから、早く帰りなさい」

担任の瀬川先生が、日誌を受け取りながら言いました。

瀬川先生は若い男の先生で、イケメンだし、優しくて面白いし、おまけにバスケも上手いから、生徒たち(特に女子たち)から、とても人気があります。

そのときも、わたしとマホちゃんに、他の先生たちから見えないように、こっそり飴を渡してくれました

(「遅くまで、日直ご苦労さん」ですって。こういうさりげないところがモテるのです)

わたしたちは、「先生さようなら!」と元気に挨拶して職員室を出ると、わざとバタバタ足音を立てて、昇降口のところまで行きました。

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コメント(5)
  • 予想外の展開でゾッとしました…(;´Д`)

    2023/12/12/10:35
  • 面白かった

    2023/12/12/21:07
  • うわぁ。
    まさかの展開。
    でも、現実は、案外こんなものかも知れませんね。

    2023/12/12/22:06
  • 狐の窓のおまじないが役に立って結果的に良かった。

    2023/12/13/03:49
  • 予想外の怖さがありました( ̄□||||!!

    2024/01/14/22:55

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