墓荒らし

近所に大きな霊園がある。俺はよくそこでランニングをしに行く。そこである恐怖体験をしてしまった。

　俺がランニングに行くのはだいたい21時くらいだ。夜飯を食べ終えて軽く走った後は風呂に入るのが俺の寝る前のルーティンだ。今日もいつも通りの時間に家を出て霊園に向かった。

　その霊園はかなり広くて緑も豊富なのでランニングに適してるといえるだろう。だけど街灯がほぼなく夜道はかなり暗いうえ人通りは少ない。だから女性の一人歩きなんかはおすすめしない。

　霊園に着いてしばらく走ってると妙な物音が聞こえてきた。一旦足を止めて耳をすませてみると何か食べ物を食べる音のようなものが聞こえた。気のせいかと思ってまた走ろうとしたところ、墓の前に腰の曲がった老人がいることに気づいた。恐らくお供えものを勝手に食べてたと思われるけどあまりの出来事に
「わ！」
と声をあげてしまった。するとその老人が振り向いたと思ったらダッシュでこちらへ向かってきた。

　考える間もなく俺は（死ぬヤバい死ぬヤバい）と恐怖でいっぱいになりながら走った。街灯がなくほぼ見えないけど普段ランニングで通ってる道なので体が覚えていた。老人の様子を伺おうと一旦後ろを向いたら、なんとその老人は腰を曲げず姿勢正しく腕をよく振って走っていた。しかも老人とは思えない速さで走っており自分との距離は思ったほど広がらない。あまりに異様な光景で泣きたくなったけど捕まったら恐らく死ぬので俺はスタミナが尽きるまで全力で走った。そして日頃ランニングしてたおかけで時間が経つとだんだんと距離は広がっていった。

　どうにか撒いて俺は霊園を出て近くのコンビニへ避難した。そして飲み物を買ってイートインコーナーで休憩して正気を取り戻した。それと同時に助かった安堵感で胸がいっぱいになった。あの老人への疑問は尽きないけどそんなことより家の近くにあんなものがいるとなると俺はもう夜遅くの外出も嫌になった。ランニングは明るい時間帯のみにしてあの霊園には二度と行かないようにした。おかげでもうあの老人には出会ってないけど次会っても逃げ切れるかは不安だ。