寝言を言う友達

ピリッと肌の表面に嫌な感触が走ります。
『霊感体質』の妹が、この世のものでない存在と対峙した時の感覚です。

「返事しなさい、答えなさいよおおおおお！　答えろおおお！」
声はDさんですが、口調が全く違います、彼女はこんな乱暴な言い方をしません。

妹は恐怖より怒りを覚え、Dさんの肩を押さえ、口を耳元に寄せると、
「あんた誰？　Dちゃんの中から出てって」
と、低い声で言いました。

「お前こそ誰だ、答えろおおお！」
「うるさいね、みんながみんな、あんたを怖がると思ったら大間違いだよ、出てけよ、早く！」
と、凄むと「ううー……」と、呻いて静かになりました。

Dさんは修学旅行には行かなかったものの、それ以来、寝言は言わなくなったといいます。

それは一体なんだったんだ、と私が尋ねると、
「さあね、わかんない。でもヘタレな奴で良かったよ」
と、妹は笑いました。