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心霊

Mr.採掘さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

見知らぬお婆さん
長編 2023/03/24 19:20 2,102view

 これは10年以上前の出来事です。

 私には中学時代からの親友Kちゃんがいて、大人になった今でも良く一緒にお出かけしたり、遊んだりします。

 Kちゃんは学生時代からすでに霊媒体質で、行き先が良くない場所だと体調を崩したり、ただ遊んでいただけなのにいつの間にか憑かれていて、人相が変わってしまったり、性格もすこしばかり変わったりすることがあります。

 対して私は霊感がほぼありません。Kちゃんと一緒に出かけても体調は崩れないし、彼女に「視える」ものも私には「視えません」。ただKちゃんが「普段の彼女ではなくなった」ことだけは普段の様子を知っているから、解ります。

 一緒に泊まったホテルで何か「居た」としても、私には分からないので、Kちゃんから翌朝に「夜中踏まれてたよ」と笑われた事もあります。

 別の日。この時はKちゃんと京都へ遊びに行った帰りの出来事です。

 すでに時間は遅く、外は真っ暗。電車のガラスには乗車している人々の様子が写っています。

 Kちゃんと楽しくお喋りしつつ、ガラスをふと見ると、一瞬ですが、ガラスに写るKちゃんには口ヒゲが生えていました。「え?」とKちゃんを見ても、もちろん口ヒゲなんて生えてなく…。別れ際に「入ってるでしょ?」と確認すると口ごもりつつも否定もせず苦笑い。

ちゃんと除霊するよう伝えて、その日はお別れしました。後日連絡したところ、問題なさそうだったので、「無事で良かった」と安堵したことを覚えています。

 そんな彼女と、一緒に暮らしていた時期があります。

 当時は、仕事の関係で地元を離れることになったのですが、お金がなく賃貸を借りられなかった私は、先に地元を離れ、一人暮らしを始めていた彼女の家に居候させてもらうことにしたのです。

 Kちゃんは朝早くから夜遅くまでの仕事だったので、私が仕事と料理や掃除などの家事を担当し、たまに小さな喧嘩をしつつも狭いワンルームの中で、楽しく過ごしていました。

 Kちゃんの家に居候して数ヶ月、彼女は取り憑かれている時もあったりしましたが、いつも彼女は彼女自身で除霊して対処しているので、私は見守るだけ。私自身は特に異変はありませんでした。

 後になりKちゃんから明かされたのは「あの家には小さな女の子が居候している」とのこと。Kちゃんにはお姉ちゃんがいるのですが、相性が合わず、苦手としているため、お姉ちゃんがお泊まりに来ると体調を崩すのです。

 小さな女の子はそれを知ったからなのか、Kちゃんのお姉さんには色んなチョッカイをかけていたようです。

 幸い私はその女の子に認められていたようで何もされた覚えはありません。Kちゃんも「お姉ちゃんにだけしてる」と言っていました。

 そんな感じで、特に影響を感じてなかったのですが、『霊感の強い人と一緒に過ごしていると霊感が上がる』ことはあるようです。

 ある夜、一つしかないベッドに入り、友達の横で寝入り始めた頃、ふと頭の上の方から“チリーン“と鈴の音が聞こえたのです。

 この家には鈴なんて置いていないし、ましてやベッドの周辺は、Kちゃんが好きな漫画や小説が所狭しと雑多に置かれ並んでいるだけ。風も吹かない家の中で鈴の音なんて聞こえるはずがないのです。

 私は周りを見渡しました。鈴は一体どこから鳴ったのか…。見渡しましたが、鈴はどこにもありません。

 壁も何もないグレーがかった空間の少し遠いところにお婆さんが立っているのが見えました。杖をつき、白い服に覆われた貧弱な身体をしています。

 しかし、顔は鬼のような形相をして私を睨んできます。

 「えっ?」と思った瞬間、お婆さんはとてつもない勢いで私の方に向かい飛んできました!そして、体当たりをしてきたのです!!

 避ける間もなかった私は咄嗟に腕をクロスにして、庇いました。が、お婆さんはお構いなしに正面から突撃してきます。貧相な身体の割にとても強い力で押されました。

 少しの間、押し合いになりました。恐怖で目が開けられません。私は「どこか行け!どこか行け!どこか行け!」と叫び続けました。すると、諦めたのかお婆さんはシュッどこかへ飛んで消えていきました。

 お婆さんが離れた瞬間に反動で腕がバッと開き、目がカッと開きました。しかし、実際に動いていたのは“目だけ“で、腕は寝始めた時の位置から動いていなかったのです。

 口も動いていたわけでなかったようで、一緒にベッドに入っているKちゃんは起きてきませんでした。単にシーンとした空気が流れています。いつもの寝る前の雰囲気と変わりませんでした。

 今でもあの時の不思議な感覚は忘れられません。

 私はしばらく動悸が止まりませんでした。周りの景色を確認しましたが、やはりお婆さんは視えません。ベッドの頭の上方を見ても、もちろん鈴もありません。

 ただただ、部屋の内装や散らかった物、雑多に置かれた漫画や小説、電源の入ってないテレビにはベッドにいる自分たちが目に入るだけでした。

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コメント(1)
  • 見知らぬ婆さんの正体が大変気になる。

    2023/03/24/22:17

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