奇々怪々 お知らせ

不思議体験

kanaさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

より子ちゃん (加筆修正版)
長編 2023/03/04 22:58 4,500view

ボクと母は中に通され、運よくそれを鑑賞することができた。
しばらく讃美歌に聴き入っていたが、ボクにはもう一つ大事な目的があった。
より子ちゃんを探すことだ。講堂内に集まっている人たちをくまなく目で追う。
「きっとまた会えるよね」と自分に言い聞かせるように願うのだが、
その小さな白い天使の姿はなかなか現れてはくれない。

「ふぅ」と一息ついて下を向き、あきらめかけたその時、
ボクの隣にスーっと白い光が現れた。

「より子ちゃん!?」

思った通り、やっぱり教会でまた会うことができた。
ニコっと笑顔を向けてくれるより子ちゃん。

そして今日はクリスマスイブである。
ボクは密かに用意していたプレゼントをより子ちゃんに手渡した。
そうはいっても、女の子に何をあげれば喜ぶのかよくわからなかったボクは、当時自分がハマっていた鉱石採集セットの中から、かわいいピンク色のローズクウォーツを持ってきて、それをプレゼントにしたのだ。

「メリークリスマス、より子ちゃん」

手にしたローズクウォーツをしばらく目の前にかざして見て、笑顔になるより子ちゃん。

「よかった気に入ってくれたみたい」

それからより子ちゃんはボクの隣に座り、まるでそれが当たり前かのようにボクの手をずっと握っていた。あたたかい空気がボクたちを包んでいる気がする。

母とボクとより子ちゃん、3人で並んで静かに讃美歌を聴いている。
なんだか世界がとても美しく感じられた。
いつまでもこの平和で優しい世界がずっとずっとつづいてほしい…。

ボクはそう願いながらまどろんでいた。

でも、母にはより子ちゃんが見えないのだろうか?まるで気づくそぶりがない。

「お母さん…お母さん、あのね……あのね……」

深く静かにこの暖かい世界に溶けそうになりながら、ボクは母により子ちゃんを紹介しようとしていた。

・・・・・・

「ほら、もう帰るわよ。起きて」

母親の声でボクは目を覚ました。どうやら少し眠ってしまったらしい。
より子ちゃんもいなくなっていた。夢から覚めるとはこの事か。
ローズクウォーツはなくなっている。より子ちゃんが持ち帰ったのは間違いない。
こうしてボクは、ちょっとだけクリスマスイブを彼女と一緒に過ごすことができた。
きっとこれはサンタさんからの贈り物だったに違いない。

3/5
コメント(1)
  • kamaです。こちらの作品は、去年のクリスマス時期に一度「クリスマス特装版」としてクリスマス色を強く出してお送りしましたが、本来のこの作品は「息子の誕生日」をきっかけに話が進むものですので、改めてこちらの作品をディレクターズカット(一度言ってみたかった)にして再掲載させていただきました。この物語の正式バージョンとなります。

    2023/03/04/23:03

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。