数学教師

「やっぱり！」と彼女は叫んだ。「母が道を外れて電柱にぶつかる直前、私は何かを見たの。窓の外を見ると、隣の車線に車が走っていて、運転席には木村先生が乗っていた。あとはぼんやりとしか覚えていないけど、彼のことははっきり覚えてる。彼はただ私たちを見つめていた……」
要するに、木村先生が事故を起こしたというのだ。私はどう考えたらいいのかわからなかった。しかし、もし木村先生が両方の事故の現場にいたのなら、何らかの関係があるに違いない。あまりに偶然の一致が多すぎる。

陽子は木村先生に気をつけろと言った。彼は危険で、私が次の犠牲者になるかもしれないと言っていた。どう考えたらいいのかわからなかった。
翌朝 学校に行くと赤い車が道の端に止まっていた。木村先生の車だった。運転席は見えなかったが、私が近づくと、車のエンジンがかかり、轟音を立てて通りを走り去った。それだけで私は怖くなった。

私は神経が衰弱していた。夜、窓の外を見ると、家の前に木村先生の車が停まっているのが見えた。時々、運転席に座って、冷たい目で私をじっと見ている彼を見ることができた。彼は私を威嚇しようとしていた。
しばらくすると、明らかに私はおかしくなった。食欲がなくなり、何も食べられない。体重はどんどん減っていった。寝ても覚めても木村先生のことばかり考えている。

両親は私が学校で苦労していると思い込んでいた。そのうち、理科の斎藤先生が廊下で私を呼び止め、「理科室で会おう」と言ったのだ。
「何か私に話したいことはないか」と彼は尋ねた。「木村先生に関係することですか？」

彼ははただ頷いた。私はすべてを吐き出した。木村先生が事故に関与しているのではないかという疑念を話した。

私が言い終わると、斎藤先生は怪訝な顔をしていた。
彼が私のことを気違い呼ばわりして、部屋から追い出してしまうのではないかと思ったが、彼は私の肩をたたき、私を信じると言った。

数年前、木村先生と一緒に別の学校で教えていたことがあるという。その学校では、木村先生が教えている間、奇妙な事故が何度かあったというのだ。

当初は、破壊行為の問題があり、数人の生徒が教室に侵入し、スプレーで壁に落書きをしたそうだ。また、教師の机を壊して、備品を盗んだりもした。最後に押し入ったのは木村先生の教室だった。

その翌日、3人の生徒が自動車事故で亡くなっていた。車のトランクからは、先生たちから盗んだものが見つかり、後部座席にはスプレーの缶が転がっていた。学校を荒らしたのは、明らかに彼らであった。

学校のみんなはぞっとした。木村先生を除いては。斎藤先生は、事故のことを知った木村先生が嬉しそうに喜んでいるのを見て、不審を抱いた。

しばらくして、学校は教師の削減のために、何人かの先生を辞めさせなければならなくなり、斎藤先生と木村先生は職を失った。翌日、この削減を行った学校管理者が車に轢かれ、その後病院で亡くなった。

斎藤先生は、木村先生が管理者をただじっと見ていたと言った。私が見たのと同じように、冷ややかで、歯がゆい視線を送っていたそうだ。それ以来、彼は木村先生を監視しているのだと言った。

私は驚き、何と言ったらいいか分からなかった。私は斎藤先生に、「何とかしないといけない」と言った。木村先生のせいで事故が起きたのなら、彼を止めなければならない。警察に連絡しなければならない。

斎藤先生は重々しく首を振った。「何もできないんですね」と私は絶望的に言った。「その晩、私は学校からの帰り道で、誰かに見られているような奇妙な感覚に襲われた。首の後ろの毛が逆立っていた。周りを見回すとそこに木村先生の車があった。

道路の反対側に停めている車の、そのすぐ前に木村先生が立っていたのだ。背筋が凍るような思いだった。彼の顔は怒りでゆがみ、私をじっと見つめ、その目は冷たく、悪意に満ちていた。

次の瞬間、首のあたりがギュッと締め付けられるような感覚に襲われた。彼は私の首を絞めていたのだ。私は息をすることができなかった。私の肺は空気を求めて戦っていた。私は恐怖を感じ、自分の喉にしがみついた。

私は意識を失い始め、もう死ぬのだと思った。やがて、恐ろしい音が聞こえた。耳をつんざくような金切り声に、金属と金属がぶつかり合うような音が続いた。

首の締めつけが止まり、呼吸ができるようになった私は、ようやく体を起こして、何が起こったかを見た。別の車が木村先生の車にぶつかってきたのだ。

木村先生は2台の車に挟まれ、上半身は血まみれで車のボンネットの上に横たわっていた。死んでいた。口から内臓が飛び出すほど、つぶされていた。見ていて気持ちの悪い光景であった。

車のドアが開き、よろめきながら出てくる人影があった。大怪我をしていた。私は駆け寄り、彼の顔を見た瞬間、足が止まった。斎藤先生だった。