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不思議体験

一郎さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

サキちゃん
短編 2023/02/12 23:49 1,150view
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これは私がまだ小学校に上がる前の出来事です。

当時、私たち家族は新宿の百人町という所に住んでいました。両親はそこで小さな文房具店を開いており、3歳年上の姉が一人いて、姉は私とよく遊んでくれたものでした。

戦後の復興を終えたばかりの新宿には、まだいくらか戦争の爪跡が残されていました。私の住んでいた百人町の近くにも、灰色をした塀で囲われた一角があり、母親からは何時も「あの塀の中で遊んじゃいけないよ!」と言われていました。

ある時、小学3年生だった姉とクラスメートのサキちゃんが、文房具屋の家の前で何か話しをしていました。私が近寄って行くと、サキちゃんが「カズちゃんも一緒に来る?」と言うので、私も二人の後ろから着いて行きました。

二人は例の塀の方に向かって歩いて行くので「お姉ちゃん、こっちは塀だよ」と私が言うと、姉は「そうだよ。これから塀の中の建物を探検するんだ」と言葉を返してきました。

母親からは止められていたので、私が困った顔を覗かせていると、再び姉が「カズもおいで――でもお母ちゃんには内緒だよ」と言うのです。私は姉に遊んでもらいたかったので二人について行きました。

塀の中には煉瓦造りの建物が数棟ありました。一棟を残し他は屋根はなく、朽ちかけた壁だけが残されていました。三人が、壁しか残っていない建物を外から覗いた後、サキちゃんが「ここも探検しよう」と屋根のある建物を指差したのです。

私は恐くなり「中には入らない!」と言うと、姉が「カズもおいで」と私の手を引っ張ったのです。恐かった私は姉の手を振り払うと、泣きながら家へと走り帰ってしまいました。姉もサキちゃんをその場に残したまま、私を追うようにして塀の外へと出て行きました。

夕方になって、サキちゃんの母親が血相を変え、私の家を訪ねてきました。サキちゃんが戻らないと言うのです。

当然、私と姉が塀の中に入ったことは母親にバレてしまい、酷く怒られました。警察も周辺を捜索しましたが、結局サキちゃんは見付かりませんでした。

しかし、9時を過ぎた頃でした。サキちゃんのお母さんがサキちゃんを連れて、私の家にやって来たのです。そして「やっとサキが帰って来ました」とホッとした表情で言っていました。

姉は、サキちゃんとは幼稚園の頃から何時でも一緒に仲よく遊んでいたので、サキちゃんの特徴を細かいところまでとてもよく知っていたみたいです。サキちゃんと母親が帰ったあと、姉が私に奇妙なことを言うのです。

「サキちゃんのおでこには、右側に凄く小さいホクロがあるんだけど、さっき来た子はそのホクロが左側にあった……あの子、サキちゃんじゃない!」

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コメント(4)
  • その後が気になります。
    サキちゃんじゃなく誰だったのかな。

    2023/02/13/13:20
  • ↑気になります。誰か彼女の成り済ましじゃないかと。

    2023/02/13/14:08
  • んで今でもお姉さんはその時の体験を覚えているのかしら?

    2023/02/13/21:21
  • ホクロの位置が違うって怖い。別人?

    2023/08/04/19:12

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