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心霊

takeさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

秘密基地への道中に
長編 2023/02/03 23:25 3,575view
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私以外の4人に、あの女性が見えていないのは確かなようで、そのまま歩いて行っても、物理的に接触することはないようです。
それでも、体が重なると、違和感を覚えて気持ちが悪いので、こうやって四つん這いで通過しているのです。
彼らに『霊感』があるのかどうかはわかりませんが、見えないながらも、何かを感じているのでしょう。

3人目が通過し、R君がそろそろと動き始めます。
私は息を呑んでそれを見守りました。
R君の背中からわずか10数センチ上に、女性のつま先が揺れています。
「ほら、早くこいよ」
先に渡り終わった3人が私を呼びます。

今考えれば、そのまま引き返してたほうがよかったのかもしれません。
でも、そこは小学生男子、仲間との証、というか、男の子の意地、というか……。
私は歯を食いしばって、しゃがみ、そろそろと前進したのです。

女性の真下を通る時は、鳥肌が立ち、ざわざわと静電気のようなものが体じゅうを包んでいるようでした。
間違ってもその足に触れたくないという気持ちが強すぎて、ほとんどほふく前進のような形で通過しました。
「そこまでやんなくてもいいって」
R君は笑っていましたが、私には笑う余裕がありませんでした。
立ち上がって、服についた土埃や草を払いながら、振り向くことができませんでした。
(もし、女の人がこっちを向いていたら……)
「さあ、いこうぜ」
R君たちがにぎやかに笑いさざめいて歩いていく後ろを、私はよろよろとつき従ったのでした。

秘密基地は意外と立派なものでした。
大きな木を軸に、トタン板を組み立て、ブルーシートを被せ、
中にはどこから持ってきたのか、古い折り畳み椅子や小さな踏み台が置いてあり、

座って寛げるようになっていました。
棒切れがいくつか立てかけられているのは、武器か何かのつもりでしょうか。
大きな懐中電灯がふたつ、ライト代わりにつけられ、持ってきていたジュースやお菓子を飲み食いし、
アニメやゲームといった、たわいのない話をして過ごす時間は、結構楽しめました。

「そろそろ帰るか」
誰ともなしにそう言い、引き上げることになりました。
と、いうことはまたあの女性の下を通ることになります。
「あそこ以外に道はないの?」
試しに聞いてみましたが、
「他は草が多すぎて掻き分けていかないと駄目なんだよな」
「沼があったりするから、道を外れると危ないんだよ」
と、いう言葉が返ってきました。
腹を括るしかないようです。

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コメント(1)
  • ほふく前進しても通れないよ。

    2023/02/04/01:03

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