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不思議体験

キミ・ナンヤネンさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

嘘松
長編 2023/01/08 00:45 7,760view
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「だったら何なんですか。」

「もう『嘘松』なんて書き込まないようにしてほしいだけなんです。」

「え?どうしてそれを…?」

「今度また『嘘松』なんて書き込んだら大変な事になりますよ。だからもうそんな事はやめてください。」

女は、やっと伝えられた事で、緊張しながらも、何か安堵したような表情をしていた。

「不思議に思われるかもしれません。私は『そういうの』が見えるんです。」

何をそんな馬鹿な、と言いたかったが、『嘘松』を知ってるのはどういう事だ?

そう考えている間、女は慌てたようにショルダーバッグから小さなケースを取り出し、中の名刺を俺に渡してきた。

「よかったらここに一度来ていただいたら、もっと詳しくお話ができます。もちろん、電話でもメールでもかまいません。」

俺は名刺を受け取り、じっくりと名刺を見た。名刺には

〈H駅前占いの館 占い師 〇川〇美〉

その裏には住所と電話番号やメールアドレス、そして簡単な地図があった。

(この女はこの近くにいる占い師なのか。今どきは宗教の勧誘は問題があるし…。)

そんな事を考えながら名刺の両面を繰り返し見て視線を上げると、いつの間にか女の姿は無くなっていた。

辺りをキョロキョロと見渡すと「いかなる勧誘行為を禁止しています」という立て看板があるのに気が付いた。

長い時間立ち止まって話をしていると、勧誘行為とみなされて何か注意でもされるのだろう。

なるほど、それならこの場からすぐにいなくなってもおかしくはない。

あんまり関わらなくて良かったなと思っていたが、家に着いた頃には女の事などすっかり忘れていた。

風呂から上がってビールを飲み、テレビをBGM代わりにしながらネットに書き込むのが俺の夜のルーティーンとなっている。

(さてと、嘘はどこですかね…。)

いつものように、荒唐無稽な書き込みを探し始めた。

<ちょうど高校受験の日の事でした。駅を降りて試験会場に向かっていると、同じ受験生であろう女の子に会場までの道を尋ねられた。せっかくなんで一緒に行きませんかと誘ったんだけど、結局二人とも合格したんで付き合うことになりました!>

くだらん!ただの願望かよ!よって嘘…

いや、待てよ、そう言えばあの時の占い師は「嘘松」はやめろと言ってたな…?何かとんでもない事が起こるとか何とか…。

女の言う事を信じるわけじゃないが、確かに最近は「嘘松」に囚われすぎたせいか、テレビもネットも楽しめなくなっていた。

(しばらくの間、女の言う通りにしてみるか…。)

結局、この日は何も書き込まないことにした。

それから1週間ほど経ち、妙な疑心暗鬼というか、人が言う事に対する疑問というものが無くなり、すっかり気分が落ち着いてきたのがわかってきた。

(たまには人の言う事も聞いてみるものだな…)

あの占い師の女のおかげか、何だか生まれ変わったかのような、最近はすがすがしい気分で生活が出来ているような気がしていた。

2/5
コメント(2)
  • 数年前に、これと少し似た話を書き込んだことがあるので、もしかしたらそれを読んだ方がいるかもしれません。その時は占い師ではなく、喪●福蔵でしたが。
    作者より

    2023/01/08/00:56
  • ネット廃民ほどおもろい滑稽な存在はいない

    2023/09/30/12:06

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