生臭いニオイ

友達の紹介で陶芸教室に行ったときの話です。

友達のおじさんが私と友達をそこまで車で送ってくれたのですが、その道中の車内が異様に臭かったのです。

私は最初から変な臭いがするなと思っていて、その臭いの出所を探していました。

おじさんや友達と話しながら臭いの出所を探ったのですが、結局分からなかったです。

友達のおじさんの車なので、失礼なことを言ってはいけないと思って、ずっと臭いを我慢していました。

しかし、陶芸教室の帰りにさすがに我慢できなくなって、車から降ろしてもらいました。

二人とも臭いに気づいてなさそうだったので、車酔いしたと嘘をついて、しばらく外の空気を吸っていたのです。

しかし、その外でいるときにもまた、あの、車内で匂った生臭いニオイが漂ってきました。

何の匂いなのと辺りを見渡したら、すぐそこに友達のおじさんが立っていました。

そこでおじさんに「大丈夫か？」とたいそう心配され、背中をさすられました。

だけど、どちらかというと有難迷惑です。

おじさんがこっちに来ると生臭いニオイがすごすぎて、もっと吐きそうになりました。

そしてやっと臭いの出どころが友達のおじさんだと分かりました。

私は一体何を持っているのかと不審そうな目で見てしまいました。

その後、なんとかニオイを我慢して、家まで送り届けてもらったのです。

友達は私と違ってぜんぜん平気そうに見えました。

友達はずっとおじさんの隣の助手席に乗っていたのです。

あんなにすごい臭いなのに、なぜ平気なのかとずっと不思議でした。

やっとのことで家まで帰ってきて、二度とあのおじさんと一緒の車は乗れないと思いました。

だけどその後、陶芸教室に誘われることはありませんでした。

それから数日後、友達に驚くことを言われました。

あのおじさんが亡くなったと聞いたのです。

なんでも釣りが趣味だったおじさんは一人で沼釣りをしているとき、沼で足を滑らせて亡くなったらしいです。

詳しいことは分かりませんが、すごく臭い沼だと聞きました。

私はそれを聞いて、あの日の車内のニオイが思い浮かんだのです。

そして思いました。

もしかしたらあのとき、おじさんから漂ってきたあの生臭いニオイはその沼のにおいだったのかもしれません。