俺だけ見える心霊写真

瞬間的に「こいつ死んだ奴の上に立ってんのか？」なんて思ったんだけど、ＢもＤも何も写ってないって言ってたから俺がおかしいのかと頭を掻いた。
ＡとＣが亡くなったせいでストレスでそう見えてるのかと思って、俺って意外と弱い人間なんだと消極的になってた。

んで、写真をアルバムに戻して段ボールに収めたらクローゼットの奥にしまいこんだ。
懐かしいものだけど、その分、今の俺が見ればすごく悲しくなってくるから心の余裕が持てるまでは封印する事にした。

それから俺が高２になって夏が来た頃、Ｄの訃報がまいこんだ。
Ｄは帰省先で川遊びをした際に親戚の子供が流されて溺れていたのを助けようとして溺死したらしい。
子供は運よく岩場みたいなでっぱりに引っ掛かって流されずに済んだのか、駆け付けた高校生たちが救出したと聞いた。
そして奇妙なのが、Ｄの葬儀に参列した時にその高校生たちにＤの最後を聞いたら、なんでも
「Ｄが突然足を引っ張られたみたいに川底に沈んでいった」と話していた。
Ｄは金槌じゃない事は俺も知っている。

寧ろ泳ぎはうまい方だが、そんなＤが溺れるなんて想像もつかなかった。
因みに、Ｄの親戚やその高校生たちがＤは足でも攣ったのだと口々に言っていたので、俺もそれが原因でＤは溺れたのかと半信半疑だが納得する事にした。

葬儀にはＢも来てたから、帰りにＢに「Ｄが溺死したのは足が攣ったからだってさ」と教えると、Ｂは「Ｄが？どんだけついてねえんだよ」と悲しそうにぼやいてた。

その晩、俺はふと写真の事を思い出して、久しぶりにアルバムを開いた。
何故だかＤの訃報を聞いた時から頻りに写真の事が脳裏を過ってたんだ。
それで写真を見てみると、やっぱり人影の位置が動いていた。
Ｃの後ろ辺りに居たはずの人影がＤの方に寄ってるんだよ。

いよいよ気味が悪くて写真を親父やおふくろにも見せたんだけど、やっぱり人影は俺にしか見えていないみたいで、「何にも写ってないけど……」と訝し気に俺の事を見て来た。
たぶん、立て続けに友達が死んだから俺の精神が病んでるんだと誤解されたんだと思う。
そんな両親に「ごめん、気のせいだった」とはぐらかして俺は部屋に戻り、すぐさまスマホで近くの寺を検索した。

流石に写真に写る５人中３人が死ねばこの写真が良くない事は身に染みて理解できた。
だから、寺でも神社でもいいからお祓いって言っていいのか、とにかく写真をどうにかしてもらおうとその筋の人に頼むことにした。

一先ず近くに寺を見つけたから電話してみたんだが、翌日に話だけでも聞いてもらえる事になって約束を取り付けた。

これでこの悩みから解放されると、俺は肩が軽くなった気分だった。

だが、翌日寺で住職に事情を話せば、反応はあまり芳しくなかった。
写真に悪霊がついてるとか、住職の手に負えないとか、そういう悪い意味じゃなくて、単純に写真から邪気とかそういった悪いもの、つまり心霊的なものは一切感じないと面と向かって断言されたんだ。
だからただの写真にお祓いをしても何の意味もないと渋い顔をして言われた。
その表情からは「こいつ寺をからかってんのか？」みたいな本音が浮き出ていたが、俺が必死に友達が三人も事故死した事を訴えれば何とか冷やかしではない事は信じてもらえた。
それでもお祓いに意味はないと言われたが、何度か頭を下げたら渋々引き受けてくれた。

寺で写真にお祓い、供養と言った方がいいのか分からないけど、とにかく除霊してもらってから半年ぐらい過ぎた。
高２の年明けだったと思う。