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心霊

youchiさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

スキー場での出来事
短編 2022/08/18 16:50 1,291view
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20年近く前のことです。
会社のスキーサークルに所属していた私は、2月の連休を利用して、志賀高原での合宿に参加しました。
スキーサークルといっても、部員のレベルは様々で私は初心者でしたが、その日は皆が上級者コースを滑るというので、私も渋々リフトに乗って、一番傾斜のきついコースに行きました。
皆で一斉に滑り出したのですが、見る間に仲間たちはスピードをあげて見えなくなる中、私はボーゲンでゆっくり滑っていました。初心者には無理なコースだったな、と後悔しながら必死に降りていると、三人のグループが風を切って私を追い越して行きました。同じゼッケンを着けているその三人、動きがピッタリとシンクロしていて滑らかな滑り。何かの競技の練習なのかな?そんなことを思いながらふと回りを見ると、自分の前後には誰もいません。上級者コースのまだ1/3も滑っていない地点で一人きりになり、さすがに不安になってきました。
急がなくちゃ!と思った途端、転倒してスキーが脱げてしまい、私はそのまま何メートルか転がりました。やっとの思いでスキーが脱げたところまで這い上がり、スキーを装着しようと思うのですが滑ってしまい、なかなか装着できません。どのくらいそこにいたでしょうか。
ふと人の気配がしたので上を見ると、先ほど私を追い越した三人グループが、こちらに向かって滑ってくるのが見えました。相変わらず三人の動きはぴったりです。先ほどは気がつかなかったのですが、同じゼッケンの三人のニット帽は赤、緑、オレンジの鮮やかな色をしています。私の脇を通るときに一生懸命顔を見ようとしたのですが、早すぎて何も見えません。ただ、あまり背の高くない細身の男性三人であることは分かりました。またあの三人に追い越されるのは嫌だと思い、何とかスキーをはいて彼らの滑って行った後を必死に追いかけたのですが、またしても転倒。今度は腰を打って立ち上がることもできません。

どうしよう。。泣きそうになっていると、背後で私の名前を呼ぶ声がしました。サークルの先輩があまりに私が遅いので探しに来てくれたのです。助かった!と思ったのも束の間、先輩の言葉に愕然としました。
「完全にコースアウトしてるよ!」
顔を上げると私が居たのは立ち入り禁止のロープの中で、その先は谷です。
確かにあの三人の後をついていったのは間違いありません。
転ばなかったら、私はどうなっていたのでしょうか。

三人のニット帽の鮮やかな色だけが、今も目に焼き付いています。

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関連タグ: #声
コメント(1)
  • この手の話は初めて見た
    おもしろ怖い

    2022/08/18/22:27

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