タクシー運転手の予言

サラリーマン時代、残業で終バスを逃してしまうことも多く、そんな時はタクシーを利用して帰宅していました。

その日も目の前で終バスが行ってしまい、やむを得ずタクシーに乗りました。

遅い時間の乗車では、こちらが疲れていることを配慮して、黙って自宅まで乗せてくれる運転手もいれば、そんなことお構いなしに話しかけてくる運転手もいます。

「…私ね、いろんな未来の事がわかってしまうんです。今70歳だけど、この仕事は72までらしくて」

「知りたくないこともわかってしまうんで」

正直、面倒臭いのに当たってしまったと、心の中で思いました。
疲れてるのにそんなオカルトじみた話、やめてよ…

「…地震、きますよ。大きなやつが」

ホントいい加減にしてよ、と思い、身を起こしてミラー越しに運転手を見ましたが、彼の表情は固く、ウケを狙って面白おかしく話しているようには見えません。

「この一週間、本当に気を付けてください」

あまりに真剣にそう言うので、いつの間にか私も話に引き込まれてしまいました。
自宅前に着いて精算すると、おつりと一緒に防災のパンフレットのようなものを手渡されました。
なんだそうか、明日から９月だからそんな話をしたのか..

タクシーを降りようとする私を運転手が呼び止めました。

「お客さん、この一週間、必ず地震きますから。気をつけて。助かって欲しい人にだけ話してるんです」

東京で暮らす私には被害はありませんでしたが、それから一週間後の９月６日、北海道で大きな地震がありました。
これも説明のつかない不思議な出来事の一つです。