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心霊

ぴさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

タクシーのお隣さん
短編 2022/08/20 12:24 871view
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私は仕事の飲み会の帰りに、部下に支えられてタクシーに乗り込みました。

その日はストレスの発散かのように激しく飲んで、思いっきり吐いてしまいました。

いつもなら電車で帰るのですが、それを心配した部下がタクシーを拾ってくれたのです。

タクシーに押し込まれて、呂律が回らないまま、なんとか自宅を教えました。

運転手は50代くらいのベテランの運転手で、酔っ払いが乗ってきたことに少しだけ嫌そうにしているように見えました。

ただ私が気になったのはその人ではありません。そのタクシーの運転手の隣に、もう一人お客さんらしき人を乗せていたのです。

黒髪の女性でした。酔っぱらってなければ、私はそのことを指摘したかもしれません。

しかし酔っ払いだった私はどうでもよくなって、そのまま眠ってしまいました。

揺り動かされて起こされて、家の前についていることが分かりました。

「お客さーん降りてくださいよ」と困った顔でタクシーの運転手に言われて、私は無銭でタクシーを降りようとしました。

慌てて止められて、支払いを要求されました。

そして私が支払おうとして小銭を落としてとドタバタしている間も、助手席のその女の人はピクリとも動かず、ただ隣に乗っているだけでした。

あまりに反応がないので、私はタクシーの運転手にダル絡みし、「隣の人ってどこで降りるの?」と聞いたのです。

タクシーの運転手は不審そうな顔で、「隣?」と怪訝な顔をしてこっちを見ました。

私が助手席を指さしても、ちっともぴんと来てないようでした。

「今日のお客はお客さんで最後だよ」と私は言われて耳を疑いました。

だってすぐ隣にまだ一人乗せているではありませんか。「隣にいる人よ隣にいる人!」と私は絡んでいきましたが、ただの酔っ払いの戯言だと思ったのでしょう。

タクシーの運転手は、とりあえず早く家に帰ったほうがいいよと車を締めてしまいました。

そしてタクシーがUターンして私の隣を通りすぎるときに、助手席の女の人と目が会いました。

女の人は薄気味悪い笑顔で「ニヤ」と笑ってこっちを見たのです。私は背筋が凍りつきました。

それまで後ろ姿だったので分からなかったですが、女の人は肩から下がなかったのです。

タクシーを見送ってすぐに私はアルコールが一瞬で抜けるように目が覚めました。そ

して、その日は酔いがさめたのに、なかなか眠れなかったです。

今思い出しても、あれは心霊体験だったのでしょう。

今もあのタクシーは隣に肩から下のない女性を助手席に乗せて、外を走っているかもしれません。

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