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呪い・祟り

足が太いさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

石を投げたのはお前か
長編 2022/07/29 23:27 4,594view
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問題が起きたのはその日の夜、皆が寝静まった頃です。
嫌な予感がして目を覚まし、そっと布団から体を起こしてあたりを伺っていると、どこかから「誰だ…石を当てたのは誰だ…」という声が聞こえてきました。
びっくりして、両隣に寝ていた両親に「ねえ!起きて!早く!」と必死に声をかけたのですが、寝ぼけているのかなかなか起きてくれません。
その間にも声はどんどん大きくなっていき、部屋中にこだまするように聞こえました。
私が耳を塞いで耐えていると、やっと両親が起きてきて、「どうした?体調が悪いのか?」と、言ってきたのです。

どうやらこの声は私にだけ聞こえているようで、両親には全く聞こえておらず、どうやって説明しようか迷っていたところに部屋の扉をノックする音が聞こえました。
父が扉を開けると、そこにはリカちゃんのお父さんが立っていました。
そして、「リカの様子が変なんだ。石を当てたのはお前かって声が聞こえるって…。怯えていて何も喋らない。今日何があった?どこに行ったんだ?」と、父を押しのけて部屋に入り、私の目の前に座って問い詰めてきたのです。
私は震えながら必死に説明すると、リカちゃんのお父さんは「あの池でそんなことをしたのか…」と頭を抱え、「すぐ住職を呼んでくるから、何があっても部屋から出てはいけない」と言って、急いで部屋を出て行ってしまったのです。

私は両親から「どういうことだ」と詰められ、リカちゃんのお父さんに話したことを更に詳しく話しました。
すると、「とにかく、おじさんが言っていた通りこの部屋から出ないようにしよう。お前は耳を塞いでいなさい」と、おじさんが戻ってくるまで布団の中に入っているように言われたのです。

おじさんが部屋を出て、数十分くらい経った頃、リカちゃんのおばさんが部屋に来て「住職さんが来たからこっちの部屋においで」と、私達家族を別の部屋へと連れて行きました。
その部屋には住職が1人と、怯えた様子で耳を塞いでうずくまっているリカちゃん、リカちゃんを心配そうに見るリカちゃんのお父さんと、池に一緒に行った子供達3人とその親らしき人達がいました。
リカちゃんのお母さんに案内されて部屋に入り座ると、住職が「子供達だけ私の前に来なさい」と言って、おいでおいでをしたのです。
その言葉に従って住職の前へ行くと、「声が聞こえなくなるまで耐えていなさい」と言って、お経を唱え始めました。
1時間、2時間…どれくらい経ったのか、ひたすら聞こえてくる声に耐えながらお経を聞いていると、不意にあたりが静かになりました。
いつの間にか瞑っていた目を開けると、そこには汗だくの住職がいて、「これでもう大丈夫なはずだ」と言ったのです。
住職の言う通り、もうあの声は聞こえませんでした。

住職は私達と、後ろにいる大人に向けて、ある昔話をしてくれました。
昔々、あの池には綺麗な柄の大きな鯉がいて、池の主だと言って皆で大切にしていたのです。
しかし、時が経つにつれてあの池に近寄る人は減り、それに比例するかのように池は濁っていきました。
住職など他の数名の大人達は時々池の掃除をしているようですが、それでもなぜか池は濁ったまま、生臭い臭気を発しているのです。
いつしか「池に行くと祟られる」という噂が流れ、ますます人が近寄らなくなりました。
ある時、私達のように池へ行った子供達がおり、その子らは池に悪さをしたらしく、そのせいか皆揃って「池の主に祟られた」と怯えて帰ってきたのだそうです。
その子供達は、「池の主が来てる、連れて行かれる」と耳を塞いでうずくまり、そのうち衰弱して亡くなってしまったのでした。
それ以来、あの池には事情を知っている大人以外立ち寄ることを禁じられたのです。

あとから聞いたのですが、池に石を投げ入れたリカちゃん達は、もっと恐ろしい言葉を聞いていたようでした。
体も1日でここまで酷くなるのかとお医者さんがびっくりするくらい、衰弱していたようです。
私は池に石を投げなかったからか、そこまで酷い目には遭いませんでしたが、本当に怖い思いをしました。

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