夜の病院で付いてくる影

数年ほど前の出来事になります。

当時私は左耳の前あたりに腫瘍が出来てしまい、取り除くために市内の総合病院へ入院していました。

手術は５時間ほどかかり、かなり大掛かりになりましたが無事終わり一安心、術後の経過もよく集中治療室から大部屋へと戻る事ができました。

部屋は６人部屋で、私は窓側のベッドを使用できる事となり、部屋のレイアウト的には入口から一番奥のベッドとなります。

大部屋に戻り３日後ぐらいだったと思います。

点滴はほぼ常時行っているのですが、点滴を付けたまま移動も出来るので割と自由に病院の中を探索できます。

当然トイレも自分で行けるので病室からは少し離れますが、そこを利用しておりました。

そんな中、確か午前２時頃だったと思います。尿意で目を覚ました私は、いつも通りトイレへ向かいました。

夜中の病院という事で怖さは感じていますが、漏らす訳にはいかないので仕方なく向かい、何事もなく部屋へ戻った時です。

「誰かついてきてる？」不意にそう感じました。

気のせいかなとも思いましたが、自分のベッドに戻った時には確信に変わりました。

間違いなく誰かの足音が病室へ入ってきてます。

しかし、トイレへ行く時、トイレで用を足している時、トイレから戻る時のどの場面でも私以外誰も居ませんでした。

「なんだ、なんだ」言いようのない恐怖で、正直動くことも出来ず固まっていたと思います。

人間恐怖を感じると動けなくなるんですね。その間もその誰かは確実に私のほうへ近づいてきてます。

「同じ病室の誰かであってくれ」、「助けて」もう祈る事しかできず、しかしその誰かは、私のベッドを仕切るカーテンに黒い影を写しだし、もうそこまで来ています。

そしてもう誰かが入ってくる、「ダメだ・・・」ここで私の記憶は終わっています。

気が付くと翌朝になっていました。

結局夢だったのか、現実だったのかもわからないですが、私の記憶には確実に恐怖として残っており忘れる事は出来ない出来事です。