父さんの声

1か月前の話

俺、トイレで考え事する癖があって、トイレに座って何か考えだすと何十分もそこにいるってことがよくあるんだ

で、大抵が母さんか妹にドアをノックされてどやされる

「ちょっと！　いつまで入ってんの？」
ってなカンジで

で、ここからが本題なんだけど、3か月前くらい前にトイレで長時間考え事してたら、ノックがあって、

「おい！　何してるんだ？」
って父さんの声が聞こえてきた

「あー。ごめん。もう出るから」
って答えて、それから少しして俺は驚いた

慌てて、ドアを開けたが、そこには誰もいなかった

何故驚いたかというと、俺の父さんは俺が4歳の頃に亡くなっているからだ

父さんの顔も声も正直どんなだったか覚えていない
でも、さっきの声が聞こえた瞬間、これは父さんの声と瞬間的にわかってしまった

父さんの幽霊がいて、俺に会いに来たんだ
そう思った

俺はまた会いたくて、トイレに意図的にこもるようにした
こうすればまた会えるかもしれない

俺は出来るだけ母さんや妹がいない時はトイレにいるようにした

そして、1か月前

俺がトイレに座り考え事をしていると、誰もいないはずなのにノックされ、

「おい！　何してるんだ？」
聞こえてきた

父さんの声だ
俺はすぐにドアを開けたい気持ちを抑え、座ったままで声を出した

「父さんこそ何してるんだよ？　ずっと家にいたのかよ」

俺が気付かなかっただけで、父さんはずっと死んだあとも俺を見守ってくれていたんだろうか

しばらくして
「ああ。ずっといた。ずっと見ていた」
確かにそう言った