絶対に給食を食べない不気味な友人Sとその母親

波板っていうのか？あのうねうねした、透明な板。
かなり年季入ってるみたいで、ところどころ補強された痕があった。
家の中は一目でわかるゴミ屋敷だよ。
とはいっても、テレビで特集されてる奴じゃないぜ？
だらしなさが充分に伝わってくる、そんな場所だ。
何ヶ月も前のチラシが床に落ちてるし、統一感のない雑誌がいたるところに置かれてある。ゴミはポリ袋に入ってるけど、外に出されてないんだ。
本当にSがここに住んでいるのか、不思議だった。
玄関を抜けて、リビングに案内されたんだ。
リビングは結構広かったな。12畳くらいはあったんじゃないか。
「適当に座って。いまご飯作るわ」
それだけ言って、Sの母親は小汚い台所に向かったんだ。
勘弁してくれよって思った。
俺、結構潔癖なところあってさ、友達のかーちゃんが握ってくれたおにぎりとか食べれない人なんだ。
ちらっと台所見たけど、洗ってない食器が山盛り。食欲失せるっつうの。

問題はもうひとつあってさ。
俺の目の前にあるテーブルに、一人座ってる奴がいるんだよ。
痩せ細った女だった。ずっと黙って座ってるんだ。こいつも結構若い。
Sの妹じゃない。俺よりも確実に年上だ。Sの母親と同じくらいの年齢だった。
キャミソールしか着てなくて、見た感じ寒そうだった。
普通さ、男子中学生なんだから、露出が高い女性を見ると興奮するだろ？
そういう気は一切起きないんだ。ガリガリに痩せ細った骸骨みたいな女。
俺が部屋に入ってきたときも見向きもしなかった。
ただぼーっと姿勢良く座ってるんだ。
Sの母親はもちろんノータッチ。鼻歌交じりで食事の準備をしてる。
Sが俺を家に上げたくない理由がめちゃくちゃ分かった。

そんなに時間はかからなかったかな。
「できたわよ」ってSの母親が器を持ってきた。
俺と、もう一人の女の分。

その料理を見た瞬間、この家に来たことを心底後悔した。
出てきたのは、緑色のドロドロした何かだった。
見た感じはおかゆに近い。雑草粥とかじゃなくて、もっと汚い色。苔に近い色合いだ。
ろくに食器も洗ってないんだろう。お椀の縁には何かがこびりついていた。
その汚れから分離した油？が表面に浮いてテカってんだ。マジ吐きそうだった。
俺、思い出したんだよ。
Sの口臭のこと。青臭い匂いのこと。
嘘だろ？って思ってSの母親のほうを見たんだ。
そしたらあいつ、ニコニコしてやがんの。目で「喰え」って言ってるんだ。
俺は口をつけなかったんだけど、もう一人の女はガツガツ食い始めた。脇目も振らず、手で掬って。
「お腹、すいてない？」
笑い皺ができるくらい、Sの母親が笑いながら言うんだ。
あぁ、食べなきゃダメかぁって思ってたら、玄関が開く音がした。
リビングの入口をじっと見てたら、Sが立ってたんだ。帰ってきたんだ。