ネコのしっぽ

　ある時、我が家の周りに野良ネコが住み着きました。八割れ模様で、しっぽがしましまの雄ネコです。野良ネコが多くて糞害に悩んでいる住宅地だったので、放置するよりは手なずけて去勢してしまおうと、あれこれ手を尽くしました。何とか撫でたり抱いたりできるようになり、そろそろ病院へ連れて行けるかな、というある晩のことでした。

　がさがさと、家の裏手で音がします。ネコの声もした気がしましたが、家の周りには野良ネコが多いのでまた雄同士の喧嘩か何かだろうと気にも留めませんでした。でも、その時ちゃんと見に行けば良かったのです。

　翌朝、私が庭に出ると、裏手に細長い物が落ちていました。よく見ると、それはしましまの毛皮のようなものでした。見覚えのあるそれは、私が仲良くなった雄ネコのしっぽだったのです。

　ネコ同士の喧嘩だとしても、骨の通った尾を落とすことはできないでしょう。それに、周りには血痕やむしられた毛など、争ってしっぽに傷を受けたのであれば一緒に落ちていそうなものは何もありません。ただ干からびて汚れたしっぽが一本転がっているだけです。

　もしかしたら、それはしっぽではないのかもとも思いましたが、結局その日以降、仲良くなった雄ネコは姿を現さなくなりました。何者が、どうやって、何のために我が家の庭にネコのしっぽを落としていったのか、全く分からないままです。