インビジブル・ストーカー

私は学生時代、大人な男性が好みでした。

同級生の男子は子供っぽすぎると恋愛対象に入らず、友達にはいつも愚痴っていました。

同級生は大人じゃないからみんなひたすら子供っぽいと思い込み、好きになる人は近所のお兄ちゃんとか、学校の先生とか、背伸びしていたように思います。

そして彼氏を作るなら絶対年上と、お姉ちゃんの知り合いや先輩に人を紹介してもらっていました。

その人と付き合ったのも、うんと年上と付き合うことに憧れがあったからです。

逆にいうと私は子供だったんです。

中身ではなく、年齢で大人っぽさを判断してしまっていました。

だからその人と付き合ったときも、大人だからきちんとしている。

大人だから大人っぽく接してくれると信じていました。

そんなことないのに、そう思い込んでいたのです。

この人と付き合って、一気に大人への憧れが単なるまやかしだったと気づき、目が覚めたのですけどね。

その人はごく普通のサラリーマンでした。

お金持ちなわけでもなく、重要なポストについているわけでもありません。

年齢が私よりも一回り年上の私から見たら大人の男性でした。

私は美人とかかわいいタイプではありませんでしたが、愛嬌ある妹系とよく言われました。

彼はそういう人が好みだったのでしょうね。

私がちょっとおねだりするといろんなものを買ってくれたし、我儘も笑って許してくれました。

最初はすごく優しくて理想の彼氏だと思いました。

しかし、日に日にだんだんと彼の様子は変わってきて、私を束縛するようになります。

その束縛の仕方が厄介で、例えば私がちょっと目を離した隙にスマホを勝手に触って誰と連絡を取り合っているのか把握し、私に男友達の連絡先をすべて消してほしいと頼みます。

また毎日電話してきて私のプライベートをすべて把握しようとしました。

最初から彼が私への執着はあきらかで、結構な異常さだったのです。

私は日に日に重くなっていく彼の行動に我慢できなくなって、こちらから別れを切り出しました。

相手は大人だから別れてまでもしつこくされないと思っていたのです。

別れてから1か月もせずに私は別の男性と付き合い始めました。

相手は学校の1歳年上の先輩で、珍しく同年代と付き合うんだねと友達に驚かれました。

私は前に付き合っていた人の引き合いに出し、大人の男性像が壊れたと話してしまいました。

その話がどこからか彼に漏れてしまったんですね。

そのあたりから私は彼にしきりにストーカーされるようになりました。

夜に狙ったように後を付けられるのです。