鳴るはずのないナースコール

けがをしたという患者さんを見に行くと、右の頬骨付近に手のひらほどの大きさの赤黒い内出血痕ができてしまい、とても痛々しい様子でした。

患者さんに転倒時のことを聞くと「転んだ時のことは覚えていない。気が付いたら倒れていてびっくりした」と話していました。

高齢者の方は筋力が弱っていて転倒しやすいですし、血圧が変動する入浴時はふっと意識が遠のいたりすることは特段珍しいことではありません。
しかし医師も看護師も医療者であるからにはそのことは当然承知していますし、その方の状態を考慮したうえで1人での入浴を許可していました。入浴前の血圧測定でも問題はなかったはずです。

さらに、その方が浴室で転倒する少し前に同じ場所で心霊現象ともとれるような出来事があったということがなんとも気味が悪く感じました。

偶然と言ってしまえばそれまでですが、何かの虫の知らせだったのか、それとも…と色々と考えずにはいられませんでした。

それ以降も、夜勤中に患者さんがいない施錠した場所からナースコールが鳴るという現象は何度か起きました。

不可思議なナースコールが鳴った場所で良くないことが起きたのはこの時だけでしたが、鳴らないはずの場所からナースコールが鳴った後しばらくは「この後何か起きるのではないか」と緊張しながら勤務していたのを覚えています。