黒いセーラー服の少女

私には不思議な体験があります。

当時私は田舎の中学校に通っていました。そこの女子制服は白地に黒襟、紺のリボンタイの平凡なセーラー服でした。
思春期真っ只中だった私は、テレビや雑誌に取り上げられる都会の学生のおしゃれな制服に憧れていました。

ある時一人で下校していると、このあたりでは見かけない制服の少女が道の先を歩いていました。
黒いセーラーに赤いリボンが映える制服は美しい彼女によく似合っており、思わず足を止めて見とれてしまいました。

転校生かな？話しかけてもいいかな？

引っ込み思案故に気後れしていると唐突に少女が振り返り、にこりと微笑みかけてきました。
友達になれると確信し、小走りに駆け寄った瞬間でした。

「危ない！」

鋭い声が耳を劈いて、誰かに強い力で引き戻されました。驚きと恐怖で凍り付く私の鼻先を、猛スピードで車が駆け抜けていきます。

「ぼんやり歩いてちゃだめじゃないか、轢かれるところだったぞ」
「あ、ありがとうございます」
「何年か前にもここで女の子が死んだんだ。ほら」

通行人のおじさんが顎をしゃくった方を一瞥、言葉を失いました。道端に献花と共に手向けられた写真に映っていたのは、さっきまで前を歩いていたあの少女です。
一点だけ違いを挙げるなら、写真の少女のリボンは清楚な白でした。

あのリボンタイは少女自身の血を吸って赤く染まったのでしょうか？