曰く付きのトイレ

地元にある公園の話です。
私の地元にある駅は、都内有数の『自殺の名所』と呼ばれるほどに一時、話題になった場所であります。
そんな駅から徒歩5分ほどで行ける場所に、大きなスポーツ公園があり、昼間は多くのスポーツを楽しむ人達で賑わうのですが、夜になると人通りもまばらで、深夜まで遊んでいる素行の悪い若者がたむろしている場所でもあります。

そんな公園に、所謂『曰く付き』のトイレがあるのです。
数年前にトイレの中で女性が殺害された事件があり、一時はニュースでも報道されました。
とはいえ、曰くと言っても事件があった程度で、所謂『幽霊が出る』という話はありませんでした。

この公園を、私はよく利用しています。
理由は位置情報型のソーシャルゲームで、ここが近所で一番遊び易いスポットだからです。
これは同じくそのゲームを遊んでいる年の離れた友人と共に公園に遊びにきた時に経験した話です。

『そういえばさ、ここで前に殺人があったってトイレ、あれってどこ？』
ゲームが一段落した時にふと、友人が聞いて来たのです。

かつて報道されたニュースを覚えていたのでしょう。
それを聞いて、私は公園の奥の方にあるトイレを指差します。

『ちょっと気になるからいってみよう』
ということで、そのトイレまで案内することになりました。
時間は昼間ということもあり、人通りが多い時刻。
ランニングしている人や、遊ぶ子供達を避けながら、そのトイレに向かいます。
トイレの横には自動販売機と喫煙所があるだけ。
特に何事も無く、タバコのニオイが嫌いな友人はやや遠目から見て、元居た場所に行った時に、何とはなしに彼は言いました。

『しかし、殺人事件があったトイレを使う奴居るんだな』
その言葉に、私は疑問符を浮かべました。

『え、トイレに誰か入っていったんですか？』

『近くに行った時に白いジャージを着た人が入ってったよ』

何とは無しに言う友人。
その言葉に、私は背筋がゾッとしました。
見に行った時に友人は、余り近寄らず入り口付近まで友人はトイレを見ていなかったのです。

『…入って行ったのどっち側でした？』

『右側』

『女子トイレも男子トイレも、入り口封鎖されてますよ』
そう、事件のあったトイレの入り口は、事件以降男女共に入り口が木の板で封鎖されており、使用禁止となっていたのです。
しかも、右側は事件のあった女子トイレ…
私は忘れていました。
この友人、霊感が強く、日常的に見えてしまう人であることを。
ちなみに私には見えませんでした。
説明した私に、友人は一言。