某ダムでの肝試しで撮った動画

「被写体おったほうが何か写るかもしれんやろ」

Ｂがスマホを高く掲げて俺達はバカみたいにそれを見つめて写真を撮られる。

何枚か撮った後、Ｂは無差別に周辺を撮影して、俺達も何枚かにそこに写りこむ形となる。

「やっぱ何も感じんな」

Ａが欠伸をし始めた。

「Ｃ、ほんまにここなんか？」

「いや、脇道ってだけでここか知らんよ」

俺は何故か動画を撮っているＢに気づき、後ろから画面を覗いて声をかけた。

「ほとんど何も写ってないやん」

「撮るだけ撮って後で見返す」

ふーんと俺は納得した。

結局何もなかったので、下山することにした。

トンネルも無事に抜けて近場のＡの家に立ち寄ることになり、そこでＢが撮った写真を見ることにした。

「何も写ってへんやん」

Ａがそういうのも仕方がないもので、本当に暗闇に染まった画面の中にライトアップされた俺たちの顔が覗いているくらいだ。

ある意味で怖い写真だが、自分達の顔と分かっているので怯えようもない。

そして、次に動画を流し始めたので、男4人は肩を押しあいながら小さなスマホ画面に釘付けになった。

「何もおらんなー」

Ａの声が入っている。

カメラが振り返り俺達が一瞬写りこむ。

ライトに照らされて４人の人影が見えるが画面はすぐによそを向いたところで終わった。

「結局何も映らんかったな」

「マジ時間の無駄やったな」

ＡとＢが愚痴あいながらテレビをつけてお笑い番組を見始めた。

俺はと言うとＣが物思いの耽っているからそれが気になりつつも黙ってテレビを眺めてた。

すると、Ｃが口火を切る。

「なあ、さっきの動画やっぱおかしいよな」

「は？」

俺達３人は何言ってんだコイツって感じでＣを見た。

ダムでも意味深な事を言って脇道に戻らせたり、きっとＣは場を盛り上げるためにわざと話を盛っているのだと思い始めた。